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次に目が合う時には。(5)

友人として過ごすのなら、いずれこういう話題にもなるだろうと思っていたものの、まさかこのタイミングでこの話を振られるとは。今は勉強と部活に集中したいから、と言って逃げられるほど勉強はできないし、部活でも成績を残しているわけではない。好きなのはお前だとも言えないし、下手に嘘はつけないから「そういう気持ちはまだよく分からない」と誤魔化した。 「中学の時は? 誰とも付き合ってなかったの?」 「……付き合ってないよ」 「そっか。俺と一緒だな。俺も中学で誰とも付き合ってないし、高校でも……」 その先を言わない彼に、嫌な予感がして膝の上で手を握りしめた。高校でも、何? 彼女はいないけれど、気になる子はいるって、そういう話? 急に怖くなってさり気なく少しだけ彼との間に距離を取った。それなのに、同じ方向を向いて座っていたはずの彼が、ぐるりと向きを変え、俺の方へと体を向けた。そうなるともう、距離を取ったところで常にこちら側を見られているわけで逃げようがない。 「……キスとか、も、したことない、よ、な?」   「……は?」 「小さい頃に近所のお姉さんと、とかそういう過去もない?」 「そんな漫画みたいな展開、そうそうないだろ」 「だよね」 じりじりと距離を詰められる。両手を前について彼は身を乗り出すようにして俺の目を見つめた。 「初キスは、俺とどうかな……」 「は……?」 何をバカなことを言っているのかと、冗談にも程があるだろと、言い返そうと思ったけれど、何も言えなかった。彼のことならそれなりには分かるのだ。これは冗談なんかで言っていないと。表情を見ればすぐに分かる。 ──じゃあ何? どうしてこんなことを言うんだ?

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