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次に目が合う時には。(6)

「……なぁ、三谷」 夕日が俺らを照らし、いつもキラキラして見えている彼がさらに輝いて見えた。吸い込まれそうな瞳から視線が逸らせず、黙ったまま彼を見つめ返す。 「神田……、やっぱり勝手すぎるよ」 「うん、」 膝で丸めていた手を、後ろに伸ばした。力が入ってどうしたって指を曲げてしまうから、それを見られたくなくて。けれど、そうしても指先には力が入る。ギリリとコンクリートを爪で引っかいてしまった。 足は広げたまま固まったみたいに動かない。そういう状況で誤魔化そうとしても無駄だろうけれど、動揺していないかのように必死に装った。 「人に、見られたら困る」 「大丈夫。グラウンドから離れているし、お前の足を心配してこっちを見る人はいないと思う」 「……失礼なことを言うな」 彼のこの言動の理由を考えた時に、一つ浮かんだ期待がこびりついたように頭から離れなくて、キスをしないかという彼の提案を拒めない。彼からやっぱりやめようと言うまで時間を稼ごうと、拒めないけれどキスをしてもいいと言わず、答えを濁したままさっきの質問には答えないでいた。 「なぁ、三谷」 「……んだよ」 「……キス、してもいい?」 二度目の質問。彼の声が震えているのが分かった。……本気なのは伝わった。だけど、後悔しない? 俺とキスしたことを、なかったことにしたいとは思わない? 「神田、」 「ん?」 「した後、ちゃんと理由を教えてくれる?偽りなく、俺に言ってくれるか?」 「……うん」 そう言った彼に、こくりと頷いていいよと伝えた。一瞬安堵した表情を見せたものの、すぐに真剣な顔に戻って、そっと目を閉じた。 本当にキスされるんだ。 ……って、俺の期待通りで良いのなら、理由を先に言うべきなんじゃあないか? 「本当、勝手な奴だよ……」 彼と同じように俺もそっと目を閉じる。 次に目が合うときには、俺たちの関係はどう変わっているのだろうか。 END

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