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明日からまた。(2)

「……保坂さん、だらしないのでボタン閉めた方がいいですよ」 嫌みの一つでも言ってやらなきゃ気が済まないと、そう言ってみた。視線を合わせないで、ぼそりと。 「あ~? 今は休憩中なんだから、どうだっていいだろ。お前いちいち気にしすぎ」 ……保坂さんにはもっと俺が考えていることを気にして欲しいけれど。 「髪だって明るめですし」   「あ?」 「……何でもないです」 結局保坂さんを怒らせて面倒になるだけだと思い、最後は何でもないと誤魔化した。そしてもう構うものかと、さっき広げようとしてやめたお弁当を膝に広げた。 「お?」と保坂さんの声がするけれど無視をして、箸箱から青色の箸を取り出した。いただきますと小声で呟きながら手を合わせ、それから真っ先に卵焼きを掴む。 今日はいつもよりきれいに出来たと自分で自分を心の中で褒めながら口を開けた時、隣から聞こえてきた「あ~ん」の声に咄嗟に反応して、開けた口はそのままで、なぜか食べるのをやめ固まってしまった。 「……え」 一度口に運ぼうとしていたその卵焼きは、保坂さんの声に阻止されたせいで食べることが叶わず、あげく彼の口の中へと消えて行ってしまった。何が起きたのかとポカンとする俺を笑いながら、保坂さんはもぐもぐと口を動かしている。それから「うまいな」とそう言って今度は、俺から箸を奪って自らお弁当の具へと手を伸ばした。 やっと状況が飲み込めた時には保坂さんは唐揚げを掴んでいるところで、俺は慌てて口を開け、保坂さんに食べさせるものかと唐揚げにかぶりついた。

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