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明日からまた。(4)

「これは自分の手作りですし、公園に来るのは、さっきまでバタバタと仕事をしていた場所でお弁当を食べても気が休まらないからですよ。落ち着く場所で、休憩時間は休憩時間として過ごしたいんです。仕事のこと考えるのやめられるから」 そう言うと保坂さんは、ふぅん……と小さく頷いた。そして俺が「だから保坂さんに隣にこうして座られるのは」と言葉を続ける必要はなく、「じゃあさっきまで一緒に仕事をしていた俺が隣に来るのは迷惑ってわけね」と自らそう口にして、俺の気持ちを分かってくれたようだった。 ……けれど、よし、と喜んだのも束の間。保坂さんは今まで見たことないくらいの笑顔で俺を見ると、「だったら仕事仲間の先輩後輩という関係はこの時間は無しにして、別の関係になればいいんだよ」と、本来の頭の良い保坂さんであれば言わないであろう言葉を口にした。 「はい?」 「お前は仕事仲間がここにいることで気持ちが落ち着かず、休憩できないんだろ? だったら俺を仕事の先輩と思わなければいいだけなんじゃ?」 それはそうだけれど……と一瞬でも流されそうになった自分にため息をついた。 保坂さんは髪をけっこう遊ばせることもあるし、明るめに染めているから、今まで一度も染めたことのない黒髪で、しかも髪型を気にしなくていいように短髪している俺からすると、保坂さんのそれはちょっと職場的にどうなのだろう? と納得できないところがある。 ……けれど、本当に仕事ができる人で参考にさせてもらうことが多いし、その点では尊敬しているから、つい保坂さんが言うのなら正しいんだろうという考えがまず頭に浮かぶんだ。……危ない。いつものようにすんなり受け止めてしまうところだった。

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