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明日からまた。(7)

「ぷはっ、」 「付き合いの経験はあるって言っていたわりに、キスは下手くそだな。深いの、したことないの?」 「はぁ……!? 好き勝手しておいて、何を、」 「まぁ……でも、お前の髪は短いから顔がよく見えて最高だわ。耳まで真っ赤にしちゃって可愛い」 「意味分からなすぎでしょ……」 耳にかける髪はないのに、保坂さんは俺の耳を指でなぞると、赤くなっているらしいそこを隠してくれている髪を後ろ側へと流す。それからさっき奪った眼鏡をかけてくれた。けれどそのせいで保坂さんの顔がはっきりと見えるようになり、頬の熱がまた上がる。 「キス、いけただろ? 嫌だったらこんないい反応しないもんな。俺たち恋人になれるよ。仕事仲間で恋人。朝来て仕事してこの休憩時間は恋人、それでその後も普通に仕事して、終わった後はまた恋人にって……。そうしたらお前だって、休憩中に俺が隣にいても仕事の延長とは思わないだろ?」 「だからなんで、って、それ、めちゃくちゃすぎです……!」 「聞かなくても考えれば分かるよな? 今回は単純に考えていいぞ。俺がお前に恋人になろうと言ってキスをした。それだけで十分だろ」 ……単純に考えれば答えは一つしかない。俺のことが好きだと、それ以外に何があるんだ。いくら保坂さんがチャラそうな一面を持っているからと言って、さすがに遊びでここまではやらない。だって仕事の時によく見るのと同じ、真剣な顔をしているから。 「じゃあ俺は先に戻るから、お前は残りの弁当食べてから戻りな」 頭をぽんぽんと触ると、散々俺を振り回したくせにあっさり帰ってしまった。一人残されて、この状況で誰がお弁当の残りを食べられると言うのだ。のどを通るわけがないだろ。 俺は保坂さんが見えなくなるまでその背中をずっと睨んでいた。

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