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明日からまた。(8)

◇ 「あの、保坂さん。これは一体いつまで続くんです?」 爽やかな風が吹き抜けているのに清々しい気分にならないのは間違いなく保坂さんのせいだ。 今日は彼は午前中出張で、だからてっきりお昼は食べて戻ると思っていたのに、俺より先にベンチに座っていた。……さすが保坂さんだ。呆れを通り越してむしろ尊敬するレベル。 俺は大きなため息をわざとらしくついて見せると、保坂さんの隣に座った。 どうせ俺ら以外にこの公園をこの時間に使う人はいないのだから、広々と使えばいいのに。どうしたって同じベンチに座らなければならないのだ。何度か違うベンチに移動してみたけれど、保坂さんもわざわざ俺の隣に座り直すし、意味のない抵抗だと分かった。 「いつまでって、そりゃあ宮澤が恋人になるまでだろ? ……いや、今は先輩後輩の関係でお昼を共にしているけれど、恋人という新しい関係になってもやることは同じだから永遠に続くな」 「……。」 今日もうまそうだな、と俺が持ってきたお弁当を横目に見ながら、保坂さんもお弁当を広げた。「お前の手作りの唐揚げとこの弁当の唐揚げを交換してほしい」という言葉を無視し、唐揚げを一口かじると、冷めてはいるものの白くてつやつやしたご飯を口いっぱいに詰め込んだ。 ──でも、俺も俺だよな。保坂さんから逃げたいのなら、別の場所に行けばいい話だ。会社内であればどこにいようと、周りはスーツの社員だらけなわけで、さっきまで仕事をしていた感覚は抜けなくなるだろうけれど、それは保坂さんがいるこの状況でも結局同じなのだ。まぁ、保坂さんがいることに慣れたのだけれど、恋人になる話をずっとされるんじゃあこっちにいるほうが居心地が悪いように思う。

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