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明日からまた。(12)

◇ 「あ、お帰り」 「た……だいま、です」 休憩が終わり自分の席に戻ると、先に帰って来ていた保坂さんが俺に声をかけた。どこにいたのかという質問はもうなくなり、お帰りの一言だけ伝えると、隣にいた同僚との話に戻ってしまった。楽しそうに話しているのは、橋元さんと言う女性社員で、以前保坂さんと付き合っているのではないかという噂が流れたこともあった相手だった。 お昼を俺と食べなくなってから、保坂さんは彼女と食べているのだろうか。本当に過去に付き合ったことがあって、そして今また、よりを戻したのだろうか。 ──俺に恋人にならないかと提案したくせに? 「……っ、」 二人の明るく弾んだ会話を耳に入れたくなくて、書類をわざと触り、ガサガサと音を立てた。どうして俺が彼らをこんなに意識しなければならないのか。  「……最悪だ」 それまでずっと一人で食べてきて、仕事以外の時間に保坂さんが誰と何をしているのか気にしたことはこれっぽっちもなかったのに。何の関係もないのに。今は、気になって仕方がない。 あの時になぜ、公園まで付いて来て俺の隣に座ったのか。単純な理由だと言ったあの言動は何だったのか。そうして今、俺に興味を持たなくなったのにはどんな理由があるのか。 自分の気持ちも含め、分からないことだらけで頭が痛い。 公園に行かなくなってもう三週間目だ。いい加減目を覚ませよ。気にする必要は全くないのだ。保坂さんは仕事の先輩であって、それ以上でもそれ以下でもないのだから。これまでと何も変わらない。本気かどうかは別として、変わることを望んだ保坂さんを拒否したのは自分だろう? 「じゃあ後で渡すな?」 「お願いします~」 話を終えて席に戻る橋元さんにそう言って優しく言葉をかける保坂さん。俺は机に向かって、持っていたボールペンを握りしめた。

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