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明日からまた。(13)

次の日、お昼を早めに終わらせて、カフェでコーヒーを買うと、久しぶりにあの公園に行ってみることにした。違う場所で食べるようになってからしばらく行っていなかったし、そろそろ保坂さんと過ごす前の日常に戻りたいという、そんな思いが強くなっていたから。……時間ギリギリまで公園でのんびりしていよう。早く戻ってまた、橋元さんと話をしている保坂さんを見たくはなかった。 「……え?」 「おー、やっと来たか」 何が起きているのかと驚いて、持っていたコーヒーを落としそうになった。慌てて紙コップを押さえる俺を、保坂さんは一緒にお昼を過ごしていた時と何も変わらない雰囲気でクスクスと笑う。色んなことに戸惑い、ベンチに座ることなく突っ立って見ていると、保坂さんは隣に座るようにベンチをポンポンと叩いた。 「どうして、ここに……?」 「どうしてって、いつもここで一緒に弁当を食べてただろ。俺はずっとここにいたよ」 「……え、」 ずっと、とは……? 俺が来なくなっても一人でここにいたってこと? まだ状況整理ができず、とにかく激しく動くこの心臓をどうにかしなければと胸を押さえ、落ち着いてリラックスしようと自分に言い聞かせた。けれどそんな俺に構うことなく保坂さんは、手を引いて無理矢理隣に座らせた。初めの時と同じくらい近い距離に、ふわりと香る甘い匂いに、緊張して体が敏感に反応する。 「約一ヶ月は長すぎなんじゃ?」 「……ちゃんと言うと三週間と二日目です」 「ふぅん。はっきり覚えてるんだ?」 「……っ、」 あまりにもじっと見つめられさらに落ち着かなくなり、ぴったりとくっついていた保坂さんから少しだけ離れた。本当は今すぐにでも立ち去りたいくらいに動揺していたけれど、それは保坂さんが許してくれなかった。手を強く握りしめ、離してはくれない。 「 それにしても、真面目な宮澤が恋の駆け引きとは随分偉そうなことをしたなぁ」 指を絡めたまま、親指の腹で手のひらをゆっくりとなぞられる。それから保坂さんは自分の親指を俺のにぴったりと合わせると、くるくる回し愛撫をした。 「別にそんなつもりは……」

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