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いつまで待たせるの?(2)
先にビールを注文して、おやじさんがくれたおつまみを食べていると、しばらくして「こんばんはー」って声がした。
「おっ、明ちゃんいらっしゃい!」
「どうもっす」
「貴ちゃん先に飲んでるよ」
「お~」
「貴之 久しぶり」
おやじさんに軽く頭を下げてから、義明 が俺の隣に座る。すると義明の言葉を聞いて、「久しぶりって、明ちゃんあんた先週も貴ちゃんに会ったろ?」とおやじさんが笑い出した。確かにそうだ。毎週必ず会っているのだから、俺らの中で「久しぶり」というのは違和感がある。
「いや、今週は仕事が大変で、その、一週間が長く感じたんで……!」
義明の顔が一瞬で赤く染まった。おやじさんだって軽くからかっただけなのだからそんな必死にならなくてもいいのに、ジェスチャー付きで弁解をしている。その姿があまりにも可愛くて、俺は笑いを堪えられなくなった。
「なになに明ちゃ~ん。そんなに早く俺と会いたかったの~?」
義明が面白かったから、もう少し動揺させてやろうと、俺は義明の顎に手をかけた。
「貴之、てめぇっ」
さっきよりも、さらに赤くなる義明。うん、これはたまらない。可愛すぎる。
「ん~?」
俺は義明の困り顔をもっと見たくて、ゆっくりと顔を近づけた。
「貴之っ!」
義明が大きく目を開く。口をパクパクさせて、声にならない声を発している。ああ~、本当に可愛いなぁもう。
でも場所が場所だけに……とか、どうこう言う前に、これ以上のことはからかいたいからって義明にやっていいことじゃあない。
そろそろやめるか、と顎から手を離そうとした時、つま先にものすごい痛みを感じた。
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