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いつまで待たせるの?(3)

「……った!!」 痛みで思わず閉じてしまった目をゆっくり開き足下を見れば、義明の革靴がぐりぐりと俺の足に食い込んでいる。 「義明っ、」 「調子乗ってんじゃねぇぞ、バカが」 「ごめん、まじ、足痛いって」 頼むからやめてくれと、義明の膝に手を置きトントンと叩く。それでもやめる気はないらしく、むしろ踏みつける力が強くなった。それにさっきまでの可愛い照れや焦りは消え、おやじさんに乗って無駄に恥ずかしさを与えた俺への怒りしかないようだ。 しらばくすると、義明はふんっと鼻を鳴らし、足を解放してくれた。つま先はまだじんじんとすしている。 俺は何も言えなくて、これは絶対にアザになるだろうなと、そんなことを考えながらビールを一気に口に流し込んだ。 ぷはっ、と息をして空になったジョッキをカウンターに叩きつけるようにして置くと、おやじさんがそんな俺を見て笑い出す。 「てっきり貴ちゃんが強いと思ってたけど、明ちゃんのほうが強いんだな。怒らせたら怖い怖い」 それからいつものように俺たちの好きな料理を出してくれた。 「どうせまたいつものって頼むんだろ?」 早く仲直りして食べちまいなと、おやじさんに言われ、俺たちは顔を見合わせてふはっと笑い、料理に箸を伸ばした。

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