225 / 230
いつまで待たせるの?(6)
◇
俺がシャワーを浴びて部屋に戻ると、義明は既にベッドて寝ていた。スースーと小さな寝息を立てている。手を伸ばし、顔の前でひらひらさせてみるも、全く何の反応もない。
いつもとは違ってこうして先に寝てしまっているのなら、俺がソファーで寝ても文句は言われない。朝、義明が俺より早く起きてソファーで寝たことがバレてしまったとしても「義明が気持ち良さそうに真ん中で寝ていたから」と言い訳すれば責められないんじゃあないだろうか。
いや、長い付き合いなのだ。義明の寝相がいいことは知っているし本人も自覚している。そんな嘘をつけば、俺が隠していることが何かは分からなくとも何かを隠していることには気づくだろう。
もう一度ひらひらと顔の前で手を振ってみた。全く起きる気配のない義明に、大丈夫だと言い聞かせた。ベッドから落ちない範囲で、できるだけ義明と離れて横になる。俺だって寝相は悪くない。こうしてこのまま離れていれば触れることもないし、無理矢理目を瞑って眠れば何事もなく朝になるだろう。
手を伸ばし、消灯のボタンを押すと、それからゆっくりと目を閉じた。
「ん……」
「……っ!」
嘘だろう? と、今の自分の状況についていけない。寝ているのを確認して電気を消してから、まだほんの数分のはず。なのに、義明ときたら、いきなり俺の足に自分の足を絡めてきた。そのせいで体が密着している。
どうして。義明が寝ぼけてこんなことをするなんて有り得ない。
ともだちにシェアしよう!