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いつまで待たせるの?(9)

「貴之、」 「うん、」 「俺、お前が欲しいよ……、」 「……俺だって、お前が欲しいよ」 抱きしめてすぐに、胸のあたりが熱くなった。義明の涙が服に染みていき、じわじわと、その熱が俺の胸にも広がっていく。かなり泣かせてしまった、と反省しながらおでこに優しくキスを落とした。 びくりと肩を震わせ、驚いた表情のまま義明が俺を見つめる。そんな義明に、にこりと笑いかければ、どうしてか不機嫌な表情になった。 「キス」 「え?」 「……するとこ、違うだろっ、」 「……っ、」 顔を上げぎゅっと目を瞑った義明に、俺の喉がごくりと鳴った。 どうしてこんなに可愛いの。どれだけ俺を煽れば気が済むのだろうか。 やっと想いが通じ合って、これからゆっくりと考えていたのに、義明のせいでそれは叶わなくなった。 俺は、もう一度義明のおでこにキスをし、抱きしめる力を弱めた。てっきり今度は唇にキスをするだろうと思っていた義明は、目を見開いて俺を見ている。 それがまた可愛くて、俺は口元を緩ませながら、義明を強引に押し倒した。 「キスして、終わると思う?」 「……、」 「キスしたら、そのまま、しちゃうよ?」 「……最近、あの店に行くの、いつも遅かったろ?」 「え?」   俺の背中へと義明が手を回す。その指先まで熱くて、義明の想いがそこからも伝わる。 「実は、その……準備、してたんだ」 「義明……?」 「だから……! だから、遅れるふりして、本当は、準備を、してたって、」 「……っ、」 「早く、お前が欲しい……っ、」

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