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第2話
結局、昼休みを過ぎ、放課後になってもケイジは教室には戻らなかった。
帰ろうと廊下を歩いていると、向こうからケイジ来た。その手には、汚れたユウの靴があった。今の今までユウの靴を探していたとでもいうのだろうか。
(……そんなことしないでよ。ボクと関わらないでほしいのに)
ユウは心の中で毒づいた。ユウはケイジに近づくと表情を繕った。
「もしかして、ボクの靴をずっと探してくれてたの?」
「別に。授業がダルかっただけだ」
ぶっきらぼうに渡された靴は綺麗に拭かれた跡があった。
「ありがとう」
ユウは精一杯の笑顔で受け取った。ケイジが食い入るようにユウの顔を見るので、気まずくなって目を逸らした。
「でも、ボクのことはもう、そっとしておいてほしい。自分の力で乗り越えたいし」
できる限り言葉を包んで、関わらないでほしいと伝えたつもりだった。しかし、ケイジはぼんやりとこちらを見て、一言言った。
「……天使」
「は?」
「べ、別に。じゃあな」
(……今、天使って言ったよね、絶対)
大股で去っていくケイジの赤くなった耳を見ると、非常に嫌な予感がした。
ふと、手にしていた革靴に何か入っている事に気づいた。
ゴミかと思ったが、靴の中に入っていたのは、四つ折りにされたメモだった。
『困った事があったら、連絡しろ』
恐らくケイジが書いたであろうその文字は思いの外達筆で、携帯番号も一緒に添えられていた。
ユウはそのメモを握りつぶした。
(ボクが欲しいのは、優秀なアルファ。ベータの高校に通うような落ちこぼれは必要ない)
「あ。りっくん……」
ふと、窓の外を見ると、幼馴染の野山陸が楽しそうに恋人と帰っていた。
彼を見ると、なぜか心が痛くなる。
(彼もベータだし、僕の人生には必要ない)
心の中でそう言い聞かせ、ユウは一人で下校した。
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