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第4話
「ボクは番を見つけなきゃ駄目なんだ。優秀なアルファを魅了して番にならなきゃ……。番になって上り詰めなきゃ。そうしないと、誰もボクを認めてくれない……」
ユウは涙が出そうになった。その顔を隠そうと身をよじったその時だった。うなじに衝撃が走った。
一瞬遅れて、ケイジにうなじを噛まれたのだと気づいた。
「ツガイツガイうっせぇんだよ!」
(噛まれた? 番? なんで?)
混乱するユウをよそに、ケイジはユウの肩を掴んで怒鳴った。
「黙って聞いてりゃ、好き勝手煽りやがって。てめぇのこと好きだから助けに来たに決まってんだろ、この馬鹿!」
ユウは返答ができなかった。ケイジの告白に対してというより、ケイジと番になってしまった事実が飲み込めない。
「誰も認めてくれねぇだと? 世界中の誰が認めなくても、俺が認めてやるよ! それじゃ不満かよッ」
「ふざけんなよ!」
ユウは生まれて初めて、他人に怒鳴った。両手を伸ばしてケイジの首を締めた。ケイジは驚き、体のバランスが崩れて、ユウの方へと倒れこんできた。ユウは身を起こすと体を反転させ、ケイジに馬乗りになった。
「ボクはこれまで優秀なアルファと番になるために生きてきたんだ! 君みたいなクズアルファと番なんて、全てが台無しだ!」
抵抗するケイジの指がユウの腕に食い込む。ケイジの顔が真っ赤になっているのを見て、ユウはようやく首を絞めていた手の力を抜いた。解放されたケイジは激しくむせている。
本当に殺すところだった。
しかしそれでもユウの怒りは収まらなかった。
(こんな奴と番だって? 冗談じゃない)
ユウは下着ごとズボンを下ろすと、自分のモノをケイジの口元へと突き出した。発情期のそれは、何もしていないのにすでに半勃ちだった。
「口開けて」
ケイジはまだ呼吸も整っていなかったが、ユウの命令に素直に応じた。ケイジはためらいがちにユウのそれを口に含んだ。その瞬間、ぞくりとした感触がユウの背筋を駆けた。
むせていたせいで、生理的に出てきた涙が、ケイジの目尻を濡らしている。その姿がユウの嗜虐心を煽った。
ユウは片手でケイジの前髪を掴んで、顔を上げさせると喉奥まで突いた。ケイジは苦しそうに顔を歪めた。
「……ぐッ」
「歯、立てないでね」
ユウは冷たく言い放つと、ケイジの口内で腰を動かし始めた。いやらしい水音が辺りを包む。初めてするその行為に加減がわからず、時々喉奥を突いてはケイジは苦しそうに抵抗した。むせたくても、ユウのものを口に含んでいるためにできず、ケイジは生理的な涙をぼろぼろと流した。ユウの先走りか、唾液かが分からない液体が口端から流れて落ちていく。
仰向けの状態で他人のものを口に突っ込まれ、髪まで掴まれているというのに、ケイジの表情は明らかに苦痛以外の表情を浮かべていた。
それに気づいた途端、快感が増した。体が熱を帯びていたことも手伝って、ユウの絶頂はすぐに来た。
ケイジはそれに気づき、口を離そうとしたが、上から両手でケイジの頭を固定させ、口内で果てた。顎を伝う液体に白い物が混じる。
「ちゃんと飲んで」
ユウは、ケイジの口内から自身を引き抜くと、手で口を塞いだ。しかしケイジもさすがに耐えられなかったようで激しく首を横に振った。ユウが手を離すと、激しく咳き込んでいた。足りなかった酸素を補おうと肩で呼吸を繰り返している。
振り返ってケイジの腰を見ると、ボトムの上からでも勃起しているのがわかった。
「君さ、こんなことされて、なんでこんなに勃ててんの」
「……違ッ……ひぁぁッ」
反論を許さないように、服の上から両乳首を捻りあげると、ケイジはビクビクと体を震わせた。ユウは冷笑する。
「君、ドMじゃん。これじゃ罰にならないよね」
「……違ぇ、離……せ……」
泣きながらに途切れ途切れに言うケイジが可愛く見えた。
ユウは手を伸ばして、ベッド脇にあるローションを手に取った。チューブ式のそれは今日
ユウはそれを握るとケイジの顔に垂らした。粘り気のある透明な液体がケイジの頰、鼻筋、口元へと伝っていった。ケイジは不快そうに顔をしかめた。
「服を脱いで。吾妻」
ユウは目の前の男を汚したくて汚したくて仕方がなかった。そうすることで、自分の醜さが少しでも紛れるような、そんな気がしていたからだ。
その夜、ユウは自分よりも頭一つ大きい男を抱いた。
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