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第4話
僕らのような特異体質のΩは、
発情期になってしまえば、
抑制剤だけでは収まりがつかないΩがいる。
通常であれば抑制剤でセーブできるのに、
それが出来ない。僕の体質もその類に入る。
もうそうなったら
αかβの男に抱いてもらうしかない。
αはラット状態になってしまったら……
長い時間をかけて精液を注いでもらわないと
治まらないのだ。
互いにヒート状態になるため、
ラット状態のαは鍵状の突起が出て、
20分くらいかけての吐精が終わるまで、
抜くことが出来ないようになっている。
無理やり抜くようなことをすると
男性でも女性でも性器を傷つけてしまう。
まるで犬の交尾のようだと思う。
だが、少ない種族の所為なのか、
確実に妊娠させるためのものらしい。
だから、発情期 の時の相手はβの方が
楽に済む、という話は聞く。
僕は『運命の番』以外には興味がない。
αは何人も番えるけれど、Ωにとっては
『番』はただ1人。
番ってしまえば、その人だけにしか
フェロモンも感じてもらえないし、
所有の証を残されてるから
その人一筋に生きなければならない。
浮気性の番で、自分が何番目かわからない
愛人のような扱いをされるような、
そんな男の子供を産んで育てる自信がない。
母には悪いが、母のような思いをするのは
ゴメンだ。他所 に子供がいないだけ
良いのかもしれないが、
いつ、そんな現実を突きつけられるのか
わからないような生活は苦しいだけだと思う。
実際、母は苦しんでるのだから。
αを産む確率が高いとはいえ、逆にΩを
産む可能性も高いのだ。1人目でαが
生まれてきたら、そこでお役御免のΩも
存在する。上流国民ならなおさらだ。
それなりの地位のある人と女性が結婚していて、
子供ができない躰であれば、愛人であるΩが
男児のαを産めば、解決してしまうのだ。
その子供を連れ去るように取り上げて、
結婚してる女性の子供として育てられる。
生活の保証をしてくれるならまだ、いい。
番を解消されて捨てられてしまうことも
無きにしも非ずなのが現実だ。
Ωである限り、選択権は少ないのだ。
愛人のままでもそのままの生活を続けられる
その保証すらない生活は怖くて出来ない。
αに誠実さを求めてはいけない、
と思いつつも、憧れるのは『唯一』の存在。
恋すらしたことの無い僕は、Ωだけではなく
人として欠陥品なのかもしれない。
けれど、好きになれたら、
きっと一筋になってしまうだろう。
だからこそ、怖いのだ。
例え、誰に恋をしたとしても、今の僕では
こじらせる可能も高いし、『運命』と
勘違いしてしまう可能性もあるのだ。
数日後に発情期が来る。また、父と兄から
逃げる生活が一週間程続く。
兄に襲われた時は、母に発見されたことが
早かった為、PTSD にはならずに済んだ。
いっその事、PTSDになった方が今の苦労は
なかったかもしれない……
そんなことを思いつつ、その苦しみを
味わうことなく育ててくれた母には感謝を
していることも事実でもある。
ため息をつきながら、憂鬱の原因で
あるからこそ、記録している手帳に
飲んだ記録をつけて、抑制剤を飲み込んだ。
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