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第11話

プレゼンが上手くいき、採用されることになった。本人も合わせての打ち合わせに入ることになった。発情期を終えたばかりなので、当面はαの影響を受けることはないが、チョーカーが自分の性を教えてしまうことになる。 顔合わせの時が一番緊張する。 会議室で、忙しいタレントを待つ。 マネージャーとスポンサーにはすでに説明済みだが、出演する本人にも、絵コンテでは伝えきれない部分を説明すれば、今日の打ち合わせは顔合わせも兼ねてのものなので終了する。 ノックもなしに突如入って来た『峰岸樹』は全体を見渡した、と思うと目線が僕の首元に戻り、また、目線を逸らしてから前を向いて 「遅くなりました。おはようございます」 と挨拶をして、頭を下げた。αなのにしっかりした子、というイメージがついた。彼はマネージャーの隣に空いてた席に腰を下ろす。 近づきすぎないように、反対側(と言っても5mは離れてるだろう)の席でスライドを使い、本人が見やすい位置で、僕がパワーポイントの操作をし、大山がマイクを持って説明をする、という手順で詳細を伝えていく。 1度聞いただけで全てを理解し、こちらの意図も読み取ってくれた峰岸は、αである前にさすがのプロだと実感させられた。 「……では、以上となります。お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。次回は撮影となります。また、よろしくお願いいたします。」 大山と僕は立ち上がり、頭を下げる。 そのままスポンサーと峰岸たちは出ていき、ホッとした大山とフッと微笑んだ。 すっかり癖になってるハイタッチをして、会場の片付けをしようとしていた。 視線を感じて振り返ると峰岸樹がドアにもたれこちらを見ていた。背も高く、スタイルのいいαの男……露出が多い彼が、その服の下にバランスのいい筋肉を持っていることを知っている。Ωの僕には絶対に作れない躰だ。 「なにか御用ですか?ご不明な点がありましたら説明しますけど?」 大山が峰岸に声をかける。 「いや……不明な点はない。ただ、見てるだけなのでお構いなく……」 確かに彼の事務所の会議室なので、見ていても大きな問題はない。逆に別の打ち合わせがあって、待ってるのかもしれない。 「大山さん、もしかしたら次があるのかも。早々に片付けて、帰った方が良いのかもしれませんね……」 と耳打ちする。 「そういうこと?じゃ、急ぎましょ?」 テキパキと片付けをして会議室を出よう、とした時にドアにもたれてた峰岸に、 「お忙しい中、今日はありがとうございました。また、撮影の時よろしくお願いします」 と、頭を下げて部屋を出ようとした時に 「撮影にはあんたも来るんだろうな?」 「……僕ですか?その予定ですが……」 「わかった……やっとあんたの声が聞けたな。オレはあの案嫌いじゃないぜ?」 その後耳元で「あの案、大半があんたのたんだろ?」と囁いてきた。 驚いて耳を押さえて、少し後ずさる…… 「峰岸さん、うちの相棒を口説かないでくださぁ〜い 。これでもピュアピュアなんですから」 「ピュアピュアって……」 僕は苦笑いするしかなかった。 峰岸に一礼して、彼の所属事務所のビルの外に出る 「……あれは気をつけた方がいいわ」 不意に大山がつぶやく。 「……気をつける?何をです?」 「だから、ピュアピュアなのよ、あんたは。 アイツαじゃん?Ωのあんたを完全にロックオンしてるね。Ωなら食い散らかせると思ったら大間違いなんだから!! いい?当日は、あたしから離れない方がいいからね?」 「わかりました」 と微笑んだ。頼もしい。本当にこの人は精神的にたくましく、女とは思えない男気のある人だと思う。 ――それにしてもなんだったんだろ…… 耳打ちされた時に感じた不思議な感覚…… 僕は未だ、その正体に気づけずにいた。

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