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第16話
「……あっ……ァん……アァ……溶け……そう……アァ……イィ……ぁん、そこぉ……」
理性を手放し、セックスに溺れる。
セックスがこれほど気持ちイイことだとは知らなかった……強制的だがヒート状態になってるから……ヒート中のセックスだからなのだろうか……?α独特のヒートの匂いが心地いい……
父のものとも兄のとものとも違う……
近親相姦を避けるために、βであっても身内の異性の匂いを嫌うというけれど。
ただ、αとΩは違う。身内であっても本能が抗えない。だから、父と兄を避けてきた。
ただ、他のヒートの時のαの匂いを知らない。
けれど、嶺岸の匂いは嫌いじゃない。柑橘系の爽やかでいて、こちらの官能を引き出す匂い。
αはΩとセックスをする時にはいつも、こんな匂いを出すのだろうか……?
「……みねぎ……さ……アァ……イィ……」
「樹 だよ、みや、び……オレも……すごい……イィ……好き、だよ……すべてが……本当に……今すぐ、噛みたい……気分だ……」
愛の言葉を欠かさない、本当に愛されてると錯覚してしまうような、快感に甘く声が掠れいても揺れる腰、滴る汗……胸の尖りを愛撫する時に触れる柔らかい髪が首元を擽る。
全身が性感帯になってしまったようだ……
躰の中で暴れ回る凶器のような大きなペニスもすべてに愛されてると、錯覚してしまうような激しさ……愛を紡ぐ口唇も自分だけに向けられてる……でも……
「……噛む……のは……ダメ……あぁん!!」
何に反応したのだろう……?一際強く奥を突かれる。それが気持ち良くて堪らない……
「……み……やび……みや……び……」
切ないような声で名前を呼ばれる。
「はぁ……アン……いぃ……奥……あっ……」
突き上げられる動きと一緒に喉からつき上がる嬌声を、どこか遠くに聞きながら快感を貪る。
――他のαはどんな匂いを出すのだろう……?
そんな興味は沸くけれど、実際にそんなことをしたら、父親が誰かわからない子供が出来てしまう……その心配は今、この状況でも、それは言える。ただ、発情 の熱を冷ますには精液を注いでもらわないと治まらない……それが1週間も続くのだ。番になれば妊娠の確率が上がるだけで、長い時間をかけてお互いに絶頂状態で、αの精を受け続ければ、番でなくても妊娠の可能性は十分にある。
――もし、この男の子供を身篭ったら……?
絶対に言えない。堕胎するか、産むかの二択しかないけれど、男性型Ωの堕胎は年齢が高くなるほど命の危険を伴う。
ピロートークを信じるほど、若くもない。
相手は今をときめくドラマに映画にCMに引っ張りだこの芸能人だ。選ぶ権利のあるαであり、『引く手もあまた』な人間だ。
CMが終われば、離れてしまう……
たぶん、この縁で、多少の接点は持てるだろうが、それは仕事上での関係であって、それ以上はない。
――好きになってはいけない人なのだ……
自分に言い聞かせながらも、その気持ちが1週間も続くのかと思うと、今から憂鬱になってしまう。1週間、抱かれ続けるのだ。
最初のヒート以来、初めてのまともなヒートだ。さらにいえば、ヒート自体が不安定な状態で、1週間続くのか?3日で終わるのか?1週間じゃ治まらないか……それすらも分からない。
αとのセックスは射精が長い。発情中は『ノット』と言われる突起が出来るため、無理やり抜くと受け手側の性器が裂けてしまう。20分〜30分かけて射精する。その間に首の後ろを噛まれれば番が成立してしまう。
双方が望んでの『番』ならいいが、強制的に噛まれてしまう場合もある。数少ないΩを番い、αを強制的に産ませるためだ。
上級階級の金持ちがよくやることだ。
ただ、それには、ヒート中で、躰を重ねて長い射精中に首の後ろを噛む必要性がある。簡単に躰を預けられるようなΩは少なくはない。
今回のヒートでその気持ちがものすごくよくわかった。ヒートがあんなに苦しいものだとは思っていなかった……
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