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第21話
ジャスト1週間で、僕の発情 は終了した。
問題なく、撮影に臨めるね、と社長が言う。
現場に入ると、台本が変わっていた。ベッドで2人で寝ていて、僕が先に起きて、キスで峰岸を起こす、というシチュエーションになっていた。CM撮影だと言うのに、嶺岸は上半身裸で情事を匂わせるように、僕はバスローブ姿での撮影だ。そのバスローブも少しはだけている。
けれど、首のチョーカーでΩだとバレている。
ため息しか出なかった。いくら僕がΩだからって、そんな姿を晒したくもない。万が一、それで嶺岸のスイッチが入ってしまったら、とんでもないことになる。その場で押し倒されて、ここ1週間と同じことになろうものなら、公開セックスをする羽目になりかねない。
けれど、撮影に入ると、さすがに嶺岸はプロだった。
ベッドで眠りについているように、目を瞑り静かな寝息を立てている。
『朝だよ?起きて?』
と僕がキスをする。心の中で3秒数えて口唇を離す。ゆっくりと瞼が上がっていき、ん〜!!と伸びをして上半身を起こして
『おはよう』
とニッコリ愛しいものを見る目で触れるだけのキスをする。その甘さはこの一週間嫌と言うほど見てきたあの眸だ。
そこで撮影終了だ。リテイクもなしに、1発OKが出た。短いセリフとはいえ、演技経験のない僕には、プレッシャー以外のなにものでもなかったが上手く言えてたようだ。
「お疲れ様でした〜」
とそれぞれ解散し、嶺岸もマネージャーにせっつかれるように、休んだ1週間のツケを払わされているようだ。まともな挨拶もなしに引き摺られるように移動していった。
「胸元は入っちゃうけど、口唇辺りから上は映さないように作るからね」
という監督の言葉を信じて、「よろしくお願い致します」と頭を下げる。
「……で?コネは作れたの?」
「勝手に携帯をいじられて、連絡先とRINEの交換は終わってるみたいですね……」
携帯を見ると嶺岸樹の名前がある。それほどない履歴の中から見つけるのは簡単な事だった。
イヤイヤながらも今回の記録もつけておく。
そして、初体験をしてしまったこと……数十分もかけて射精するのは妊娠させるため……
初めてアフターピルもさんざん飲んだ。
まずは、次の発情期に向けて、薬を処方してもらわねば……今回の発情で、発情の間隔が変わってしまったのか、それとも、そのままなのかも分からない。主治医には洗いざらい全てを色々話さなければならないだろう。
少し多めに処方してもらわなければならないだろう。主治医にとっては、僕のような特殊Ωは研究対象なのだろうが、それほど頻繁にも通っていられない。予定通りの発情期が来るのか、嶺岸に狂わされた発情期が来るのかが、推測出来ないのだ。
憶測の予定日と、薬を飲み始める日を手帳に書き込む。何度も飲まなくてはてはならないのは面倒だが、たぶん、医者にも正解は出せないだろうと思っている。
ただ、発情 で1週間の休みをもらった手前、平日に休みをもらうのは気が引けたが、薬の為に数日後に社長の許可をもらい、予約を入れた。
最初の発情 からお世話になっている先生だ。僕が、まさかのつられたとはいえヒートを起こして、その相手が芸能人だとは……
いや、嶺岸の名前は出さない方が良いだろう。彼のイメージもある。もし、万が一この話が漏れたりしたら、大スキャンダルだ。
憂鬱な気持ちを抱えたまま、新しい仕事について、大山との打ち合わせに入った。
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