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第23話

通常の予定日に向けて、薬を飲み出す。 ――が、予定日になっても大山に 「あれ?いつものそろそろだよね?匂いがしないんだけど?」 確かにいつもある僅かに感じる気怠さもない。 ――発情期がズレてる……? 思ってた通りだ。では、次の発情期はいつ来るのだろう?一応、チェックはしたが、嶺岸に無理やり発情させられたあの日なのだろうか…… 「あれあれ〜?もしかしてそのチョーカーの下は誰かさんの所有物になっちゃった〜?」 「……冗談でもやめてください……」 噛まれた記憶はないし、跡もなかったはずだ。 「可愛い〜可愛い〜後輩が心配だったんだよ?これでも〜。でも、男を知っちゃってお姉さん、これでもショック大きいんだから〜。変な色気着いちゃってさぁ〜。」 「……色気……?てか、男を知っちゃって、ってなんです?やめてくださいよ……」 「1週間もαとΩが離れることなく一緒の部屋にいて、ついでに発情してて何も無いわけないでしょ?あの嶺岸樹と一緒にいてだよ?キミ。嶺岸は最初から杉本狙いで近づいて来たのはβのあたしでもわかるわ。その時に発情させられちゃったから発情期がズレてる……ちがう?」 返す言葉が見つからない……図星だ。 「あたしだって聖人君子じゃないからね。経験の一つや二つあるわけよ。でも、男を相手にするより女の子の方が興奮するのよね。ペニバンつけて啼かせる方が好きなんだけど……」 「ちょっっ!!なんの話しですか?!」 「赤くやっちゃって〜、男を知ってもウブなんだから〜。まぁ、同じ人間相手にするなら、仕事相手の方がずっと好きだけどね。」 と豪快に笑う。女性らしくない1面だ。 「やることやった、ってことはヒートの時なら尚更避妊もしてないんだろうし、妊娠の可能性もあるから一応チェックしといた方がいいよ?オシッコで検査出来るから、後でチェックキット買ってきといてあげる。 あの嶺岸樹が初スキャンダルなのに、(おおやけ)に出来ないのが悔しいかな。あんなにエロを売りにしてるのに、スキャンダルがなかった方がおかしいんだから。手馴れてた?なんて下世話なことは聞き出さないけど、興味はあるかな。でも、キミを矢面には立たせたくないのよね……」 ――手馴れてたと言えば、手馴れてた気もする。あの苦しいヒートを引き出したのは嶺岸本人だが、助けてくれたのも峰岸だ。 嶺岸からは毎日のようにRINEが入るが、それを最初のうちは既読して差し障りない返事をしていたが、だんだん仕事に追われて既読すらつけていなかった。 皮肉なことに嶺岸とのCMの反響が良かったせいか、仕事が山積みになっていた。休んでいた1週間分の仕事も含めてだ。元々大山と話し合いながらプロットを組んでいたのだから、大山だけの判断では一方的になりすぎてしまう。 それでもこなしてくれていた仕事に感謝しつつ互いにディスカッションして肉付けをしていく作業だ。資料を一つ一つ広げてはまとめたものを社長のところに持っていき精査してもらう。 中には赤ペンで修正されて返って来ることも多いのだが、やはり少し手を抜いたところは完全に見抜かれて、的確に『もっと具体的に』と書かれて返って来ていた。 部屋に置かれていたドリンクの機械でカプセルをセットして好きなものを飲む。事務員が毎日補充してくれてるから、毎日、好きなものが飲める。それは助かっている。 検査キットで検査をした結果、妊娠はしていなかった。あれだけ毎日大量の精液を、注がれて来たのに……実は妊娠しにくい体質なのではないか?と勘違いしてしまう。 嶺岸のRINEを無視し続けた結果、僕は嶺岸に無理やりヒートされられた日をすっかり忘れてしまっていた……

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