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第24話

今日はCM撮影の日だった。前回の発情期から1ヶ月が経過していた。結局、来たのか来てないのかわからないままだったが、大山(いわ)く『ずっとあの香りはしなかった』ということだった。 まだ、CM案件を6つほど抱えていた僕らは、このCM撮りをしてからも戻って打ち合わせて、 1週間後にはまた、次のCM撮りを控えていた。そんなことの繰り返しの状態で、忙しい毎日を送っていた。 それでも、この1ヶ月で三本ものCMをこなしてきた。待ち侘びていた忙しさではあったものの、プライベートも何もなかった。 ――というのも峰岸のCMがかなりの話題になったからだ。あの時のポスターはほぼ峰岸1人がこなせばOKのものだったので、上半身裸の峰岸にバスローブをはだけさせた状態で抱きつく後ろ姿の僕と、ベッドで誰かを誘うような1人のスチールのみだったので、彼の表情ひとつで決まるようなものだったので、あっという間の撮影で終わった。その時の僕へ向ける慈しむような眼差しや色気がすごい、と話題になった。 峰岸初スキャンダルか?と騒がれたが、峰岸は肯定も否定もしなかった。 所詮はその程度、ということだ、と僕はその時に感じた。だからこそ、仕事に前向きに打ち込むことが出来た。 相手は誰だ?!と話題になったものの、スタッフのひとりだと一応の一般人アピールを峰岸もしてくれた。が、αの間では未だに話題に上がっているという。βがΩのチョーカーをつけて、ということになってるが、絶対にΩだと。 一般人なら、モノにしたい……と、Ω探しが始まってるらしい。実際に声をかけられたこともあるが『違う』と否定した。 脱がされたらバレてしまうことは確実だが、外でそんなことをする理性のないヤツはいなかったが、チョーカーだけでバレることはない。 Ωと言うだけで確定されることはないだろう。 そもそも発情もしてないのに、誰かにお持ち帰りされるような人間でもない。 コンテが全て通っていることだけが救いだが、前のように急な変更がないとは限らない。 もう、自分が出るようなマネはしたくないが、どうにか、有名俳優同士がセッティングされて、無事にCM撮りやポスター撮りも終えて解散する。見てるだけだが、ヒヤヒヤする。 さすがはプロの集まりだと思うのは、台本からこちらの意図をきちんと汲んで演じてくれていることだ。αがたくさんいる役者の中にはごく稀にΩもいる。ほとんどのバイプレーヤーはβだが、主役クラスの演者の大半はαが占めている。あんな我儘を言うのは峰岸くらいだ。 しかも意図的に、だ。 もう、あんな想いをするのはまっぴらだ。 我を忘れるように、乱れて求めて、苦しいほどのヒートの熱に焼き殺されてしまうのではないか……?と思うような息苦しさ…… 発情が始まってからでは、抑制剤が絶対に効かない身体を半分呪った。半分は快楽に溺れた。 あんなみっともない姿を誰かの絵に晒すのかと思うと、羞恥で死にたくなりそうだ。 スケジュールで埋まっていく手帳の中に、自分がずっと書き綴っていた文字が隠れていくことも気にせずにいた。

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