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第42話(大山プライベート)注意喚起あり
どうしちゃったんだろ……あたしは……
あれから、特殊Ωの薬の飲み方、処方を多めにしてもらうこと。杉本からもらった知識を全て彼に教えた。
まさかの特殊Ωで、この仕事を初めてまだ2回目の発情 だったこと、薬が上手く効かなくてスカウトされたこと、それまでは切れることなく特定の彼氏がいたこと……
客との会話とは思えない会話をベッドの中でイチャイチャしながら話をした。
あたしはβでαではないから、女でもΩを完全に満足させてあげることは出来ない。『番』にもなれない。でも、ミヤビには普通の仕事をして欲しいと思ってしまった。
どうしても、この仕事には『妊娠』がつきものだからだ。望まれて生まれる子供ならいい。相手が必ずしも責任を取ってくれるとは限らない。しかも、仕事柄、誰が父親だかわからない子供を身篭ってしまう可能性があるからだ。このミヤビも何回か中絶をしたらしい。
男性Ωの複数回の中絶は妊娠が出来なくなる可能性が女性Ωより格段に確率が上がる。いざ、自分の子供が欲しくなった時に、出来なかったり、流産を繰り返したり、という辛い経験をすることになるだろう。もし、自分がαだったら、この子を大事にして専業主夫にでもさせてあげたい、とは思うけれど、性別上無理だし、あたしのセフレでも紹介してやろうか悩む。
ただ、あたしのセフレはあくまでも女好きだ。
ただ、気になったのは、尽くされた経験がないという最中の言葉だ。この仕事のことだけではないだろう。お互いを晒して素の状態であの演技が出来るなら、役者に転向した方が良さそうだ。歴代の彼氏も碌でもないヤツらばかりなんだろう。自分の欲望だけをぶつけるだけがこの行為ではないはずだ。相手を気持ち良くして、自分も気持ちよくなる、男性と女性では熱の付き方の速度が違うから仕方ないのかもしれないが、フェラをしてもらって吐き出されるとか……あたしもほぼ経験がないから、どの味が正解なのかわからない。
「このペ二パンってすごいね。リカさんの方にもバイブが付いてるんだ……」
「面白いでしょ?ビアン用のペ二パンだよ?セックスは自己満でやるもんじゃないからね。お互いに気持ち良くなることが大事。男は出してスッキリだろうけど、オモチャは男のようにイクことがないからね。いつもならまだ、プレイしてるよ?もう、意識飛んじゃってグチャグチャにするのが好きなの。『死んじゃう〜』とか、『もうムリ』って言わせるのが好きよ?」
「ボクだってムリって言った……」
むくれてる顔が可愛い。
「あんなのは無理なウチに入らないよ?上手に潮吹いたじゃん。めっちゃ可愛かったわ〜。」
と頭をなでなでする。男だって潮は吹く。女に限ったことじゃない。
「それにあたしが本気出したら今頃起きてないよ?気絶してるか、疲れきって寝てるだろうね。知らないだろうから教えといてあげる。セックスには男より女の方が貪欲だよ?意識飛んじゃうくらい気持ちよくなりたいんだから。その前にだいたい男はイッちゃうけどね」
「リカさん……ほんっとにドS」
「嫌い?」
「……好き……」
本当に可愛い男の子だと思う。あたしの不純な動機が申し訳なくなる。杉本を求めて自分の欲望を発散させた。今回のヒートの間はムリだろうが、次のヒートは抑えられたらいいと思う。
堕胎させたばかりのあたしが、偉そうなことを言うことは出来ないけれど、杉本のようなことにならないことを祈るしかない。
女遊びをしまくってるあたしが、初めてのΩだけど男の子との関係を持って、もし、あたしがαだったら、首筋を噛んでたかもしれない……それくらい魅力的な子だと思う。
ホテトル代とホテル料金の支払いはクレジットカードから落ちるから、直接渡すことはないが、時間が来て彼があたしの帰り際、
「また、機会があったら指名してくださいね」
と言った。出来ることなら指名はしたくない。
「ミヤビはまだ若いんだから、いくらでも仕事を選べるよ?だから、この仕事から足を洗いなさい。また、どこかで会ったら、その時はまた、相手をしてあげるけど、あたしじゃ発情 は抑えてあげられないけど良いの?」
彼は無言で微笑んでいた。
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