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第46話(大山目線)レイプ描写あり
――杉本が還ってきた……
それだけであたしは浮かれていた。そして遅くなるって言ってたけど、玉妃の部屋に向かう。
途中、数人の若い男に囲まれた。
「……なに?」
一気に不機嫌になる。いいことがあったばかりだと言うのに……
後ろの男が口を塞いできたものだから肘を鳩尾に入れてやる。うずくまってる間に逃げようと思ったが、腕を掴まれて路地裏に連れていかれる。あたしが黙ってる訳もなく、叫ぶとその度に平手で殴られた。
服を裂かれて押さえつけられて、ハンカチを口に入れられて、好きでもない男連中に強姦 された。暴れたけど、なんの効力も持たず、複数の男相手に押さえつけられては、力では叶わなかった。男たちは6人ほどいた。ノットが出てないから相手もβなのだろう。
けれど、用が済むとボロボロになったあたしを放置して、財布の中身の現金だけ抜き取って去っていった。顔を見られてるのに、余裕な男どもだ。あたしが警察に行かないとでも思ってるのだろうか?
カバンからアフターピルを持っていた飲み物で飲み干し、ジャケットの前を合わせてタクシーを拾う。歩いてなんて向かえなかった。歩いて行ける距離なのに……と嘆きたかったが
「……近くてすみません」
とタクシーの運転手に告げると、いえ……警察じゃなくて良いんですか?と言われた。とにかく体の汚れを落としたかったあたしはそのまま玉妃のマンションへ向かってもらった。
カードが無事だったのは救いだったが、警察に言う前に早くシャワーを浴びたかった。
玉妃の部屋に着くとシャワールームに直行して、出された精液を掻き出して、全てを洗い流したくて皮膚が赤くなるほど擦った。
気持ち悪かった。あのまま放置して、玉妃以外の人間の子供ができてしまったらどうしよう……という恐怖もあった。
たしかに、今日は玉妃に対してそういう気分だった。でも、玉妃限定だ。玉妃が遅くなる、というのが救いだ、と思い、長いことシャワールームに閉じこもって泣いた。
シャワールームを出ると、バスタオルを出して、バスローブを羽織る。けれど、脱いだはずの服がなくなっていることに気づいたのはすぐのことだ。鍵をかけ損ねたか?いや、ここはオートロックだから、そんなことはありえない。
髪を拭きながらリビングに入ると、不機嫌極まりない玉妃がボロボロになった服を見ていた。
「……おかえり……いつ帰って来たの?」
「……那恵がくる少し前……」
「……遅くなるって……」
「愛する人が珍しく私を求めて来たんだから、頑張って仕上げてきたんだよ……で、なにこれ。那恵がシャワールームから出てこないからがおかしいとは思ってたんだけど、見に行ったら中からは泣き声が聞こえるし……」
「……ごめん、油断した……」
「合意じゃないんだね?」
「……合意だったら服は破かれない。3対1くらいなら何とかなっただろうけど、倍いたから逃げきれなかった……」
「……とりあえず、無事でよかった……服からは例のΩくんの匂いもするんだけど?」
「……うん。意識が戻ったんだ。だから、安心して抱きついちゃった……で、謝っただけ……だから、匂いが着いたのかも……」
玉妃は静かに怒っていた。それが怖い……
こんな気持ち、初めてだ。
「……那恵、明日警察に行くよ?今からでもいいけど、珍しく、那恵から誘ってくれたからね。ただ、最初は医療器具使うよ?」
玉妃はクスコを使ってあたしを開いて、あたしが掻き出しきれなかった精液を出し始めてた。病理検査の結果6人分の精液が採取できていたのは、玉妃のおかげではあったが、その時に、受精卵も取り出したらしく、妊娠はどうにか避けられた。
――安全日だったはずなのに……
と後々、後悔するとこになるのだが……
「とりあえず、私の目障りなものは全部出した。もうさ、いい加減、待てないんだけど?」
「あと1年経ったら、うちの相棒と同じ歳の子供を産もうって……約束した。だから、1年待ってくれない?そうしたら、玉妃のものになる。それでも……ダメ?」
キョトンとした玉妃の表情が眸に映る。
玉妃はあたしをそっと抱きしめて
「私の子供を産んでくれる決意をしてくれたことが嬉しい……1年後に楽しみができたよ。やっと私のモノになってくれるんだね……」
玉妃からすれば、長かったことだろう。自由奔放に遊び回るあたしをずっと、待っていたのだから……けれど……?
「……玉妃からΩの匂いがする……」
「あぁ、これ?うちの秘書のひとりが突然ヒート起こしやがって、即抑制剤を飲ませたけど、車だったから、匂いがついたのか……クソっ!次やったら別の部署へ飛ばしてやる」
チッと舌打ちをした。
「私はあいつのヒートの匂いが大嫌いなんだよ男Ωは那恵の相棒くんを除いては臭すぎる」
相変わらず男性Ωの匂いは苦手なようだ。杉本の匂いを除いて。あの時は激しかった……
「私が好きなのは、あの時からずっと那恵だから。意外と一途でしょ?」
と冗談めかして言う。
「もし、この先、『運命の番』が現れたらどうするの?」
あれだけα嫌いの杉本がとうとうあの男に落ちた。運命の番は抗えないものだと聞く……
がさつに髪をガシガシと揺すりながら束ねていた髪を振り下ろす。
「だから、運命なんてそんな簡単に転がってるものじゃないんだって。それでももし、そんなのが現れたとしても奥さんと子供を優先するのが、お父さんってもんよ。やっと那恵が頷いてくれたんだもん。現れたところで本妻にはしないし、興味もない」
はっきりと言い捨てた。そういうとこだけは本当に男気があるというかなんというか……
「ねぇ、玉妃、ベビー服のブランド立ち上げる気ない?あたしと杉本でプロデュースしたいんだけど?良いかな?仕事も続けたい……」
「そんな話までしてるの?いいよ。那恵の頼みなら今からでも部署を作るわ。将来の私たちのベビーの為にね。」
完全に玉妃は浮かれてる。あたしは捨てられることだけが怖くて、踏み出せなかった。
もし、玉妃の『運命の番』が現れたら……
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