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第47話
「1年したら僕もいつも通りの仕事出来るかなぁ?大山さんと同じ時期に子供作ろうって話になったんだ。大山さんのお相手、白石玉妃さんなんだって。すごいよね〜」
「あのホワイト・クローバーか……あそこのメンズデザイナーブランドの服のモデルはやったことあるなぁ……レディースもなかなか幅広くやってるよな。確かに男勝りな社長さんだから、あれくらいじゃないと彼女ほどじゃないけど男勝りな大山さんの相手は務まらないだろうね。だから彼女のスーツはいつもあの会社のものだったのか……納得したわ。
で?雅は?オレが相手でどうなの?」
「……信じられないくらい……凄い……」
顔が一気に熱くなる。抱かれたい男1位を何年もキープしてて、そのクセ、スキャンダルなどの浮いた噂もないαの嶺岸が自分を選ぶなんてそんな夢のような話など誰も信じてくれないだろう、というくらい僕は平凡なΩだ。
「オレもすごいと思ってるよ。α嫌いの可愛い雅がやっと心を開いてくれたからね。」
チュッと軽く音を立ててキスをする……が、後ろに実の母親がいることを無視しないで……
「ラブラブね〜。嶺岸さんみたいな人が雅を選んでくれるなんて、お母さんも嬉しいわ。しかも、雅が孫の顔を見せてくれる、なんて言ってくれる日が来るなんて思ってもみなかったわ。そういうのはお兄ちゃんに任せる、ってずっと言ってたものねぇ〜」
母は引くどころかノリノリだ。でも父さんは?
「……父さんも知ってるの?」
「話したわよ?娘の父親みたいになってたわ。お兄ちゃんの時とは大違い。『その男は雅を大事にしてくれるのか?』とか、『雅が泣くようなことは無いだろうな?』ですって。嶺岸さんはスキャンダルもないクリーンな人だって、ちゃんと伝えたわよ。それ以来、嶺岸さんの出る番組や雑誌を全部チェックしてるわよ〜」
クスクスと笑いながら母は話している。
「きちんとご挨拶したいですが、質問責めに合いそうですね……でも、唯一無二の存在なので雅も子供もオレは一生大切にしますよ。」
苦笑いしながらも嬉しそうな嶺岸。臆面もなく堂々と……恥ずかしいことこの上ない。
だいぶ歩けるようになったし、筋力もだいぶついてきた。食事も摂れるようになったので、退院も近いだろう。メンタルの部分だけは今も毎日のように診察を受けている。
半年もの間、ぶっ壊れていたんだから仕方ないことだろう。半年間、親にも大山さんにも、そして樹にも多大なる迷惑をかけた。
今日も撮影で大山は出ている。玉妃さんがベビー服や子供服のブランドを立ち上げてくれる、という話をしてきたそうだ。そのCMの仕事まで大山さんと僕とで、という内容で取ってきていた。ずっと玉妃さんからは子供を産んで欲しいと言われていたという。
玉妃さんからすれば、10年以上も待った、ということだ。子供を作るのは1年後、ということだから、正確には12年になる。
相変わらず嶺岸以外のαにトラウマを抱えてしまっているけど、玉妃さんなら大丈夫だろうか……?その頃にはたぶん、嶺岸と番になってるだろうから、身の危険を感じることは早々無いだろう。
壊れてる間にはなかった発情期 も復活しそうな気配がしてる。半年間空欄になったいた手帳の最後の記録を見る。
あの時の記録も残っていたことに、恐怖を感じた。フラッシュバックにPTSD だ。それに目を瞑って日付だけを確認する。
――そろそろ薬を飲まなくてはならないかもしれない……
「……あのさ……まだ、身体が元通りってわけじゃないから……あの……出来ないけど……発情期が来そうな気が……だから抑制剤が……」
嶺岸はキョトンとしながら、
「まだ、無理が出来ないのはわかってるよ。でも、発情期が来る気配を感じ取れるようになったのはいい傾向じゃないか。回復してる証拠だよ。オレから話した方がいいか?」
「……ううん、いい。自分で話す……」
母が気になってスムーズに話ができない。
母さん、後ろでムービー撮るのやめて……
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