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第53話

「まだ、体重が戻りきらないね。雅はまだ、食が細いから……」 「筋肉が落ちてるんだよ……」 抱き上げられながら、首に腕を回す。その時にたちこめた香りが鼻腔をくすぐる。 「あ……コーヒー……」 「また、淹れ直せばいい。それよりも今は雅が欲しい……ダメか?」 「……ダメ……じゃない……」 寝室のベッドへ連れていかれる。退院してからは、いつも2人で静かに寝ていたベッドだ。 静かに寝かされると深い口付けがおりてくるら。だけど今からは違う。愛を確かめ合う躰の繋がりをお互いに求めるだ。 「……んっ、ふっ、ンン、ふぁ……ん」 「はは……キスだけでめっちゃイロっぽくなってる……すげぇ嬉しい……」 「久しぶりすぎて……っていうか……これから……するって思うと……」 「……オレも期待ですごいことになってるよ」 とスウェット越しに手を導かれると、固く張りつめた中心に触れる。僕のどこに完璧な彼を魅了するものがあるのだろうか? 「怖くなったら言ってね?無理強いはしたくないし、ゆっくり慣れていけばいいから……」 最初は無理やり発情させた人がよく言う……と思いつつ、僕のPTSDを心配してるのだろう。 けれど、彼の準備は万端だった。躰中にキスを降らせて、後孔もローションを少しずつ足していってゆっくりと解していく。 「さすがに半年以上使ってないし、発情期じゃないから固いね……ゆっくりと解すよ?」 じれったいほどに手探り状態で、愛を囁きながらゆったりと肌を指が滑っていきながら、久しぶりのキスを堪能する。 「ん……ハッ……あァ……ン……」 あの時のような恐怖も気持ち悪さもない。甘く 痺れるような愉悦がゆっくりと背筋をぬけていく。痛いくらいに張り詰めてる中心からは蜜が溢れて指先で擦られるとクチュクチュと音がする。ゆっくりと口に含まれ、蜜袋を揉まれながら口を窄めて上下に扱かれると甘い声が喉から突き上がってくる。 「やぁん……アッ……ンふっ、あァ……」 舌がまた、這い上がって来て胸の尖りをゆっくりと乳暈から中心にかけてコリコリと舌で転がしながら反対側の愛撫も同じように指が辿る。 後孔の指も増やされてグチュグチュと音を立てながらバラバラと指が動いて内壁を広げていく。たまに指が前立腺を掠め『あっ!!』と一際高い声が上がる。 焦れったいほどのゆったりとした愛撫に焦れたのは僕の方だった。いつの間にこんなに貪欲になってしまったのだろう……?指がゆっくりと引かれる時になんとも言えない焦れったさと快楽が引き摺り出されるように背が仰け反る。 「……気持ちいい?」 「……んなの……アッ……ン……聞かなく……ても……あァ……ンッ……」 「聞きたいんだよ……雅が気持ちよくなってくれるとすごい興奮するから……」 「……イィ……きもち……イィ……あァ……もっと……もっと……」 「……もっと……なに?」 「……あァ……んッ……焦れったい……」 「……フッ、そうさせてるんだよ?言ったろ?ゆっくり慣らすって。どれだけ大切か、愛してるのかを知って欲しいからね。」 「……も……わかった……から……もっと……奥に……ほし……イィ……あァ……ン」 「それ、ヤバい殺し文句だわ……雅の顔をながらしたい……いい?」 「躰……硬い……」 「そんなことは気にしなくていい……辛かったり、なにか気持ちに変化があったら言ってね?無理強いはしたくないから……」 「……うん……んぁ……」 ゆっくりと挿入が始まる。まだ、発情期を1回とカウントすれば関係を持つのは2回目だ。初めて、お互いの気持ちを確認するためのセックスをするのだ。けれど、圧迫感はなく、ただ、ただ、これから訪れる快感を知っている躰はその期待に内壁が扇動している。 それでも、初めての時のように、ゆっくりとゆっくりと腰を進めて来るのに焦れったさを感じてしまい、脚を腰に回してグイッと押してしまう。油断していた樹のオスは勢いで深くまで入ってくる。 「ふぁァァん!!」 自分でしたこととはいえ、あまりの刺激に脳まで愉悦が背筋を駆け上がる。 「……おまっっ……ったく、我慢してるのは自分だけだと思うなよ?」 馴染ませるように僕の腰を揺すって挿入(はい)り切らなかった部分をゆっくりと埋めていき、最後まで挿入しきったところでフゥ、と息をついた。

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