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第56話

完全にイキっぱなしの状態から、インターバルなしで突き上げが再開する。 「ちょっ……はっ……待っ……あぁん!!」 「悪いな、雅に飢えてて、その飢えが治まらない……もう少し付き合ってくれ……」 ――だから、そのカッコいい声、反則…… また、直ぐに高みへと追い詰められる。 ――なんで樹とのセックスはこんなに気持ちいいんだろ……? 強制的なヒートの最中に、そんなに何回もしたら……大丈夫なのだろうか? もう、堕胎はしたくない……出来ちゃったら産む選択肢を医師が与えてくれるんだろうか……? そう思った時だった。達ってもいないのに急に抜かれた。袋を破く音がして素早くコンドームをつけた樹が、再度挿入してくる。 「……言ったろ?雅の躰に負担はできるだけ最小限に……って……」 確かに聞いた……けと、何かその薄いゴム1枚隔てただけなのに、感覚が全然違う…… 「……なんか……変……ない方が気持ちイイ」 「……オレだってそれは同じ。でも、まだ、出来ちゃダメなんだろ?ただでさえ、特殊Ωは妊娠しやすいんだから、まずは雅の躰を思いやりたい……ダメか?」 「……ダメじゃない……でも、なんかつけるの慣れてるね……それが腹立つ……」 「慣れてなんかない。αだからかな、たまたま器用なんだよオレは……」 僕はつけ方すら知らない……つけたことも無い。実物を見るのもつけたものだけだ。どんな形であの小さな袋に入っているかも知らないのに……疑いだしたらキリがないのはわかってるけど…… 「……なんでそんな……スムーズにゴムをつけられるの?」 「雅の気持ちが萎える前につけたかったから、動画で勉強した。1個で何回も巻いて練習もした。こんな恥ずかしいこと言わせんの?」 少し照れて横を向いた樹の表情は嘘では無さそうだ。大事にされてるって思っていいのかな? 「もし不満なら、イボイボのついたゴムもあるんだぜ?チャレンジしてみる?」 「……いつからアブノーマルになったの?」 ひとつに繋がった状態で何を話してるんだろ。 妊娠出来ないから気を遣ってくれてると言うのに……番になったら、この男にしか欲情しなくなる。たとえ発情期が来ても…… 「……も、動くからな……」 我慢の効かなくなった樹がゆっくりと腰を揺らす。先に出された精液が潤滑剤になって僕から溢れ出ている愛液と混じりあって卑猥な音を立てていた。その音と、僕の喘ぎと、樹の荒い息が外部との音を遮断された部屋を満たす。 「……あぁ……んッ……イィ……あぁん……そんな強……く……あぁ……ハッ、ハッ……」 「……オレもおまえを……だれにも……触れさせたく……ない……見せるのも……イヤ……」 荒い息の中、樹の本音が漏れる。樹以外のαがまだ、怖いというのに…… 「……樹……以外の……αは……まだ……怖いよ……樹だけが……んッ……特別……あぁん」 両足が樹の肩に乗っている。その状態で躰を繋げているから、顔まではっきりと見られている 「そんなエロい表情(かお)オレ以外に見せんなよ?」 「……エロを……売りにしてる……んッ……樹は……あぁん……アッ、アッ、アッ、あぁ」 「……ッ……好きでそうなったわけじゃないし……ッ……オレの本当のエロさを感じてくれるのは……ッ……雅だけでいい……」 手を伸ばして頬を挟んで見上げた顔は、男の顔をしていた。いつもの役者としての顔じゃない。どんな時でもクールに、どんな役でもこなしてきた男には見えないほど、オスの顔をして興奮している。とてもクールなセックスをしているとは思えない。けれど、それもヒートの香りがあるからこそ…… 僕は散々、イカされ、出るものも出なくなってからも樹のしつこさは続いた。さすがに疲れてしまった僕は3回戦のフィニッシュと同時に僕は意識を手放した。

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