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第65話(樹目線)

上に乗って突き上げに仰け反り喘ぎを漏らしながら、珍しく体勢を崩さず受け止めている。 いつもよりも激しく喘ぐ姿を見ているだけでこちらまで理性を失ってしまいそうな気分になる。自分がつけた鬱血の痕以外は白く滑らかな肌が少し汗ばんでいる。胸の尖りがぷっくりと膨らんでるのが目に入り両手で強めに摘むと、より中が締まる。が、突き上げるためにまた手を腰に戻して、下から突き上げる。気持ちよさそうに紅潮した躰を震わせる あんなことさえなければ、もう、噛み付いて自分のものにしていたかもしれない。心は繋がってるはずなのに、どうして横槍が入ってくるのだろう……βですら惑わせてしまうこの匂いには蜜を求めて色んなものが群がってくる。 少なくとも番になるまで、どこまで守れるか、が勝負だ。番になってもこの匂いを隠せるか、まだ、わからないのだ。 自分は完全にこのヒート状態の渦に巻き込まれている。強く甘い香りが部屋中に充満しているからかもしれない。この匂いを独り占めするための努力を惜しむ気は全くない。 あぁ、ダメだ。この状況に飲まれて激しく突き上げることを止められない。悲鳴のような声に煽られてしまっている。 「やぁぁぁぁぁん、あぁぁぁぁ、イイ、イィ」 「……ぃや、じゃなくて、いいんだろ……?オレも……イイよ……最高に……気持ち……イイ…」 好きで好きで堪らない。ひとつになって溶け合うような甘美な時間が最高にいい……従姉の時には得られなかった快感だ……この時間を永遠に味わっていたいくらいだ。 本当に好きな相手と一つになれる幸せを噛み締めている。誰にも邪魔させない、させるわけにはいかない。人生に一度出会えるか、出会えないかもしれなかった相手に巡り会うことができたことの幸せを誰かと分かち合う気持ちもなければ、壊させるわけにはいかないのだ。 この人を失ったら、もうなにもする気力もおこらなくなってしまうだろう。仕事すら出来なくなっててしまいそうだ。今は本当に雅のことしか考えられない。雅が魂で出逢った我が子の話をしてくれた時は、心が熱くなった。こんな嬉しいことはない。最初こそ、あれだけ頑なに拒んでいたことが現実になろうとしているのだ。 番もダメ、子供もいらない、そう言っていた雅の気持ちが自我を失っていた半年間の間に変わった、ということだけでも、すごく大きな成果だった。雅の身に起きたことは決して喜ばしいことではないが、雅の中で変化が起きたことは嬉しい誤算だった。雅が欲していたのは絶対に自分を裏切らないただ一人の『番』だ。 オレもただ一人を愛し続ける『唯一無二』の存在しかいらなかった。 『αは番を何人も作れるけど、Ωにとっては唯一の存在になる』そして番を解除されればまだその次を見つけることも可能だろうが、解除されないまま捨てられてしまえば、番の相手にいつまでもしがみつき、病んでしまい、はぐれΩになるか、自死を選んでしまうΩもいるという 父親も母が唯一無二ではなかった。いつも違うΩの匂いをつけて帰ってくることも少なくはなかった。決して大切にしてなかった訳では無いのはわかっていたが、そんな父に嫌悪感があったのは確かだ。母が体調を崩した時も最前の医療を尽くしてくれたこともわかっていたけれど、それでも助かることはなかった。 失意の中でも母が勧めた道を進んでいくしかなかった。それが母が望んだことだったからだ。けれど、母の見解は間違っていなかった。 ――雅と出逢えたからだ…… オレが求めた『唯一無二』を探すのに最前の道だと思ってくれていたのかもしれない。 母のその予想は、見事に果たされた。 まるで母に導かれたかのように……

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