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第67話
まるでセックス中毒になったみたいだ。
下から突き上げられる快感が全身を痺れさせる。この男とベッドで絡まる時は、官能を遠慮なく引きずり出されて、訳が分からなくなる。ヒートになってしまえば、強姦 であろうが心と体が反比例して心は嫌なのに躰は感じてしまうという状態が嫌だった。
けれど嶺岸と1つになっている時だけは、心も躰も満たされるような満足感が得られる。これが運命というものなのだろうか……?
キスの経験すらなかった僕が強制的とはいえ、この男に抱かれるようになって、セックスを覚えてしまった。処女の時に集団レイプにあってたら、二度と他人と交わることを拒否しただろう。本能でこの男だけは大丈夫と判断してる理由……それは彼の言う『唯一無二の運命の番』なのかもしれない。Ωは誰かと番えばその人が唯一無二となるが、αは違う。何人でも番えるのだ。
『唯一無二』を求めたαなんて、珍しい人なのかもしれない。けれど、僕のようなΩにとっては貴重な存在だ。好きな人を誰かとシェアする気などサラサラない。嶺岸はある意味有言実行で、僕を襲ったヤツらの会社を潰した。余罪があったことも原因の一つだが、それをあぶりだしたのも事実なのだろう。逆に言えば敵には回したくないタイプだとも言える。
怖いのは報復だ。色んなものを失った人間が、することと言ったら、自分たちを貶めた人間に対する報復をすることも少なくない。もう、失うものがない、と思った人間がやりがちなのだと聞いた事もある。また狙われることはないだろうか……?嶺岸が証拠を残して追い込むとは考えにくいが、引き金になってることは間違いないだろう。まだ、犯罪を起こしていた方は拘束されているからいいものの、何もしてないのに、突然会社を潰され、その会社の悪評で再就職も出来ないような人々だ。
その人の人間性を見てくれる会社ならいいが、最初は履歴書や職務経歴書と言った書類審査を行う会社が多い。そこで、前職が悪評高く、倒産に追い込まれたとなると、社会の目は変わってくるのが常だ。そこでそれを理由に振るいにかけられたら、どこにも引っかからない。
こうなってしまった以上は、その人の持つコネクションがないと、少なくても同業には戻れない。もしくは実績だ。能力だけなら引く手もあまたな人物もいる。そういった人材であることを祈るばかりだ。
例え、他業種に行ったとしても、まだ、ニュースになってから日が浅い。知ってる人は知っているだろう。内勤の人なら何とかなるだろうが、実際にカメラを回してたりアシスタントをしてた人はどうなんだろう……?そんなことを僕が考えていても何も解決はしない。
ただ、今は僕は僕と産まれてくる子供の身を守ることだけだ。僕の人生設計は僕の下から突き上げてくる男に完全に書き換えられてしまった。けれどそれを受け入れてる自分がいる。
僕を突き上げながらも快感に表情がより男らしくなっている。それを恍惚と見下ろしてる自分にやけに優越感を感じるのは何故なんだろう?気持ちよくて声を抑えることが出来ない。
「……た……つき……あぁ、んッ……イィ……このまま……溶け……て……しまい……そ……」
「……んッ……ずっと……くっついて……いたいな……好きすぎて……どうにかなりそうだ……」
「……抱かれたい……男……んァッ……一位を……ファ……ずっと……キープ……してる……癖にィィィィ、あぁぁぁぁん!!」
僕より僕の躰を知り尽くした男は、弱いところをより一層、攻め立ててくる。
「……そんな、世間のことより、雅の一番以外いらないよ……」
そろそろ焦れたのか、腕を引かれたかと思うと、躰を引き寄せ、反転させられまた、いつものように見上げる体勢になった。
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