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第76話(樹目線)

キスをしながら……お互いに服を脱ぎながら寝室に向かう。ベッドに倒れ込んだ時には、一糸まとわぬ姿になってキスに夢中になりながら躰の弱い所をゆっくりと撫で始めた。普段の自分では考えられない行動だ。 「……んっ、んッ、んんーッ、ファ……アッ」 ヒートの上に理性を保つためのチョーカーすらない。我慢させられた2ヶ月間…… 本来のヒートの期間の真っ最中だ。そんなに宮日グループの仕事が欲しかったのだろうか……?今夜は寝かすつもりは無い。最初のセックスで番にする。その後、どう乱れるのか、自分の世界も変わるのだろうか……? 焦らして焦らして、求められるまで挿入はしないつもりだったが、思ったより早く 「……も……ムリ……早く樹の太くて大きいの……ちょうだい?奥まで欲しいよぉ……」 涙をポロポロ流しながらお強請りされたらこちらの理性ももたない。噛むまでは理性を捨てる決意をする。今まで耐えてたんだから、今くらいは許されるだろう…… そこからはほとんど記憶が無い…… 気づいた時には、雅の項に歯を立てていた…… 全身に広がる快感が、長い射精と共に全身に広がり何かが塗り替えられたような気分だ。 雅も感じいった表情のまま恍惚とした表情と目の前に何かが見えているような何も写してないような瞬きひとつせず、うっとりとしていた。 射精を終えると抜こうとするオレを締め付けて 「……お願い……正面から抱いて……」 正常位になり、また腰を揺らすと硬度を増していく。まだヒートが収まってないようだった。 ――もう、オレにしか感じない匂い…… そうであると願いつつ、他のαの匂いを感じ取ることはなくなるのは確実な事だった。 ――オレだけのΩ……オレだけの雅……オレだけの唯一無二…… それがこんなに幸せな事だなんて…… やっと念願の番になれた…… この愛しい存在を、絶対に手離したくない。 求められるがまま、夢中で久しぶりの大切な存在の躰を貪り抱く。出会ってから、ずっと好きだったが、今は少し違う。愛しくて愛しくて、ずっとひとつに繋がっていたい。 反面、孕ませたい……より繋がりを深くしていきたい……自分だけの檻に閉じ込めておきたい。出来ることではないが、奇妙な独占欲が増していく。これはαの醜い部分だろう。 一晩かけて長い、長いセックスを繰り返した。 まだ、陽が昇る少し前に雅が意識を閉じるまで、ずっと抱き合っていた。 より愛しさが増した。『番』になるということは、αでもこんなに満たされた気持ちになるとは思いもよらなかった。 雅が起きたら、きちんと話さなければならない。あの時の雅はただの嫉妬だった。 嫉妬されるほど、思われていたことに感謝こそあれど、それを頭ごなしに押さえつけるような真似をしたのは他ならぬ自分自身だ。 オレの『唯一無二の運命の番』だということをきちんと伝え直さなければならない。 メモを見た時の焦り、電話が通じなくなってしまった絶望感……すぐに所在を見つけることが出来たけれど、すぐに会いに行けなかった自分の弱さ、頭を冷やす、と言った言葉を信じて、連絡を待っていたこと…… 強い拒絶を受けて、ショックを受けたこと。 もちろん、雅の言い分も聞く。そして謝る。この人を手放さないためにはどうしたらいいのか悪あがきをする。αだからといってΩを支配する気は無い。だからこそ、共に生きていきたいと強く願うばかりだった。 けれど、あんなことが起こるとは思いもよらなかった。 ――何があっても『雅』君だけを愛してる……

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