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第97話

「あっ……んっ……はぁ……んっ……」 目的を見失うほどの快楽に流されながら今回のセックスも激しい。挿入するとすぐにノットが抜かせまいとせり出したのがわかる。愛撫にもたっぷりと時間をかけたのに、ここからが長いのはただの遅漏だけではないようだ。少しでも長く僕と一体化して溶け合うように抱き合いたい……そんなことを言う。 それは僕も同じだ。僕を快楽へと導くのはこの男しかいない。それは番でもあり、最初からこの男からもたらされる悦楽だけが僕を満足させてくれていたからだ。他のαだったら?と思ったこともあった……が、僕は5人のαに輪姦され、一度壊れている。その時に出逢ったのが今の浬の魂である少年だったと確信している。 それでなくては説明がつかないことが多々あるからだ。若干3歳の浬が年相応の子供ではないこと。そして、発情期には僕から離れようとしないこと。浬は大切だ。でも、躰も精神も満たしてくれるのは樹だけ…… 番になってからは、特に僕は樹に依存してる気がする。愛してることに変わりはない。逆を言えば、番になったからこそのものなのかもしれない。愛とか恋とかに興味を持たなかった僕が樹にだけは異常なほどの執着を持つようになったこと。今手を伸ばして感じる温もりを失いたくないという気持ち。 「……た……つき……はぁ……んっ……好き……キス……して……あぁ!!」 キスの言葉に一際強く穿たれ、全身に甘い痺れが走り抜ける 「……積極的で……嬉しいね……抑制剤が効いて無い分……理性が……働いてない気がする……」 息を乱し強く穿たれながら、どこか遠くにその声を聞いていた気がした。舌を出すように促されそのままその声に従うと、温かい口唇に舌を食まれ深いキスが訪れる。穿たれる気持ち良さとキスの気持ち良さで全身が性感帯になったみたいに撫でられる手の動きも全てが樹でないとダメなのだと思い知らされてる気がした。 「アァんっ!!イイ……きもちい……僕が……ダメに……なる……ウッ……ァン……」 すでに息絶え絶えになっている僕は上手く言葉を紡げない。切ないくらいにどんどん樹のことを好きになってる……愛してる…… 「ダメになって、オレなしじゃいられなくなれ。何もかもを忘れて現在(いま)を楽しめよ。ドロドロになってオレだけを感じてればいい」 ――そんなのもうとっくになってる…… 誰かを好きになるという気持ちを教えてくれた男の腕の中で満たされたセックスをすることがどんなに幸せなことなのか……身をもってそれを実感していた。この男との繋がりがある限り僕は一生、この人に尽くしたい、と思う。 他の人など好きになることはないだろう。 それがどんなに辛いことであっても、僕の失った半年間を支えてくれたこの人に、感謝をすれど恨むことなど絶対に出来ないと確信してる。 今回の発情期で浬にも兄弟が出来るだろう。僕のようなΩではなく、樹や浬のようなαの子供であって欲しいと願いながら僕は今回の妊活にも期待してる。僕たちにΩはいらない。この人の母親が望んでいるように。 「……たつ……き……愛してる……」 「オレもだよ……雅だけを愛してる……」 ただのピロートークではない。お互いがお互いを必要としている愛の確かめ合いだ。 ――本当にこの人を愛して良かった…… 番になったからそう思うのか、本心からなのかなんて、もうどうでもいいことだった。 浬もいる。そして新しい命を宿そうとしている今もこの男の子供だから欲しいのだ、と思う。白く消えていきそうな意識の中で、汗をびっしょりとかいた樹から、汗の雫が落ちてくる。 「た……つきも……きもちい……?あぁん」 「……最高……いつまででも抱き合っていたいくらいに気持ちよくて堪んない。雅以外も知りたくもない……その気もないけどな」 「……んっ、僕も……樹……以外とは……出来ない……から……」 「当たり前だ。もう雅はオレのものなんだから。拒否反応も出るしな、浮気なんてするなよ?」 「……出来……る……わけが……アァん……ない……よ……樹……だけ……」 「いい子だ。今夜もたっぷりと注いでやるからな。とことん愛し合おう」 嬉し涙か眦を伝う。 ――本当に好きだ……愛してる…… きっとこの想いは、彼のどのファンにも負けないと自負している。 ――本当にありがとう。僕にこんな気持ちを与えてくれて…… これから待ち受けてることなど、知りもせずにひたすら樹からの愛情を全身で感じていた。

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