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第99話

大山も僕も予定通り、大山は女の子僕は男の子を出産した。 白石家は『妃那(ひな)』僕のところは『(あきら)』となった。明るいところを末永く照らすような存在、ということらしい。浬よりもずっと芸能人らしい名前だ。顔は赤ん坊の頃の浬によく似ている。この子も間違いなくαに育つだろう、と直感で感じた。僕の要素を兼ね備えてなければいい、と思う。まぁ、多少外見に1部分だけでも欲しいと思うこともあるけれど、αとして成功者になるには不要な要素だ。 初乳は入院中に底を尽き、そこからは多分に漏れず粉ミルクの生活になる。いつまでも母乳で育てられないのが男Ωなのだから仕方ない。けれど、授乳をして抱き抱えていると、愛しさが増していく。これを母性というのだろう。 けれど、浬と違い、昶は手のかかる子だった。ミルクも順調に飲み、3ヶ月の間は3時間おきに泣く子で、浬に手がかからなかった分を支払ってる気分だった。僕がどうしても起きられない時には樹や浬もミルクをあげることを手伝ってくれていた。元々丈夫な方でもない僕の為に母も昼間は面倒をみてくれて、僕を寝かせてくれている分、他の経産婦より多少は楽なのかもしれない。Ωは元々丈夫な方ではない。母はそこに引け目を感じているのか、よく寝かせてくれる。ただでさえ出産をしたΩは寿命が縮むと言われているからこそ……なのかもしれない。 4歳になった浬だが、すでに母にオムツのかえ方までマスターさせられていた。 「αの子は覚えがいいわね」 浬はすでに性別検査で『αの男児』と結果が出ていた。その時には僕もホッと胸をなでおろしたものだ。夢妃も寸分違わず『αの女児』の診断が出ていた。α同士の鼻も利くということか……浬は夢妃に『同じ匂いがする』と言っていたのをその時に思い出した。 「玉妃の実家はうるさくはないんだけどね、やっぱりαだと喜んでくれるみたい。妃那はどれなんだろうかな……?αかβか……Ωの可能性も捨てきれないかな……玉妃のお姉さんの1人がΩだから、可能性は無きにしも非ずなのよね」 「見た感じではΩではなさそうな気がしたよ?妃那もαなんじゃない?玉妃さんの遺伝子強そうだし……クスクス」 「あんたんとこほどじゃないわよ。いかにも『αです』みたいな顔してないもの」 「あはは……言えてる。たぶん、僕は産んだという証があるだけで、みんな樹に似ちゃいそう。αの遺伝子ってそういうものなのかな……」 「そうね〜。まぁ、でも、さすが役者の息子たちだわ。リテイクなしでなんでもこなしてくれる子役はそうそういないわよ?リテイクの必要がないのにアドバイスしてくるKAITOのおかげで、より良いものができてるのは事実だけどね」 浬は樹のような演技の才能に加えて、僕以上のプロデュースの才能も兼ね備えていた。ダメだしのアドバイスは的確でより良いものを作り上げている。もはやCMの効果は『KAITO』が作り上げていると言っても過言ではないのかもしれない。僕の作った土台の上に色々なものを積み上げていってるようだった。 息子であって、1人のプロであってなのか、僕の手の届かないところに行ってしまうような、そんな気分になる。まだ、手のかかる子供のはずなのに、浬は何を目指しているのだろう? 『ぼくはママの役に立ちたいだけ』 浬に聞いても口を開けばそればかりだ。パパはなんでも出来る人だからその必要はない、と。 ――浬にとって僕はそんなに不甲斐ないのだろうか? 昶も甘えん坊ではあるが母親役の女優に抱っこされてもカメラを向けるとよく笑う子だった。おかげで男児ベビー服のCMは順調に終わったが、逆に妃那の方がママから離れたからないから大変そうだ。大山は絶対にでないと言い切っているし、母親役の女優さんに抱っこされる度に大泣きしている。 そこに浬が入り込んで、あやしていると穏やかになる。急遽、KAITOと妃那の兄妹設定に切り替えた

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