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第101話
無事に受験も終わり、浬も夢妃も一緒に合格した。幼稚園での生活もそれなりに楽しんでいるようだった。慣れるまでは撮影を行わない、という暗黙のルールのような状態で半年以上が経過していた。
入園式の時に見回しても知った顔がちらほらいるのは、子役たちが集まっている所為だろう。子供を芸能界に入れたいテレビ関係者の子供もいるようだ。保護者の中にも知った顔がちらほらいる。名刺交換などもしているのだから、どっちが主役か分からなくなってしまいそうだ。
浬の入園準備や仕事なども重なり、そんなこんなでドタバタしていた片付けもかなり遅れてしまうことになってしまった。
ある程度の片付けが終わった頃、白石親子が打ち合わせも兼ねて家を訪れていた。
一通り家の中を見てからお茶を出しつつ打ち合わせるつもりだ。
「広いわ〜……さすが3件ぶちぬきだけあるね。この階の一部屋はかなり広い作りになってるのに、それをぶち抜くんだから大したもんだわ」
「僕だって完成を見るまではここまで広いとは思ってなかったよファミリーサイズのマンションとしか聞いてなかったからね。それで次のコンセプトなんだけど……」
夢妃と浬、妃那と昶、それぞれのベビー服、小児服カジュアルからフォーマルまで、それぞれのデザイン画はもらっていた。それを踏まえていくつかの案を出した。コンセプトを決めても、浬が現場でその形を変えてしまうことが多い。だからこそ、2人にも同席してもらっていたし、妃那と昶はスヤスヤと眠っている。
「ぼくと妃那ちゃんの兄妹設定はまだ必要?」
妃那の人見知りはだいぶ治まってきているし、今回は妃那と昶の2人での撮影を予定していた。前回の撮影は生後3ヶ月の頃だったから、大人の手が必要だったが、まもなく2人は9ヶ月目に入るのもあり、寝返りもぎこちないハイハイも出来る。5歳になった夢妃と浬はかなりしっかりしてきた。
「今回は大丈夫だと思うよ?昶と二人でやる予定だから、昶に妃那ちゃんもつられてくれると良いね。昶は撮影好きみたいだし」
「ぼくも嫌いじゃないよ?ママがそばに居てくれるから楽しいし!!」
「浬のママっ子ぶりはブレないね〜」
ニヤニヤと笑う大山に玉妃が肘でつつく。
「ウチだって早々変わらないでしょ。妃那より夢妃の方がベッタリじゃない?」
「だって妃那は玉妃にべったりじゃない。」
「お姉ちゃん が那恵にべったりだから仕方なくでしょ?子供だって身を守る術を自然と身につけるものよ?」
赤ちゃん返りもせず、ほどよい距離感にいる浬はやはりすごいのだろうか?僕は弟だし、長子の気持ちはわからないといえばわからない。樹も末っ子だからわからないといえばわからないだろう。唯一の主張は仕事をするなら、僕と一緒でないとダメなところだ。
浬が何故僕に執着するのか、は僕が産みの親だからと思っていたが、最近ではそこにも違和感を覚える。幼稚園の送迎はしているし、まさかの樹の僕が車を持つ、がその形で実現するとは思っていなかったし、誕生日プレゼントに送られるとも思っていなかった。燃費を心配するだろうから、と国産のワンボックスカーだ。確かに僕に外車は不釣り合いだが、乗り心地は悪くないし、チャイルドシートにも余裕ができる。
そこに甘えてしまっている僕も預金には余裕があるのに……と考えてしまう。 ガソリン代もカードを渡されてそれでの支払いだ。結局、全て樹に管理されている。樹は僕を甘やかしすぎだと思うのは、やっぱり男性脳のせいだろうか?
それでも、この可愛い子供たちを授けてくれた樹には感謝しかない。
打ち合わせを終えて、次の撮影までには子供たちも、もう少し成長していることだろう、と思った。僕の発情期を避けるためだ。起きた妃那と昶を向かい合わせると、思いの外相性は悪くないようだった。撮影の時もそうであって欲しいと願いつつ……
もうすぐ来る発情期に、僕の気持ちは樹への思いがまた、溢れるような気持ちになるのだろう……と思う。発情期でなくても心も体も甘えてばかりなのに、躰の疼きがずっと続く。
切ない気持ちを抱えながらきっと泣きたくなるほど彼を求めるのだろう、と思う。
『愛してくれ』と懇願するのだろう……
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