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第102話
僕の発情期を避けるために少し先になった撮影だから、当然、発情期はすぐにやってきた。
撮影の時にはもちろんαもいるからだ。特殊Ωの僕の匂いはαには感じ取れてしまう場合がある。番になったのに、厄介な性質だ。
それを指摘したのが玉妃なのだから間違いないのだろう。
「……んふ……んっ……ぅん……」
行ってらっしゃいのキスも、おかえりなさいのキスも寝室で行われる。防音がしっかりしているのと、子供たちに真似されないように。
発情期の僕はそれだけでもヒートを起こしてしまいそうになる。樹がそこにいるだけですぐにでも抱いてもらいたいくらいだ。樹もそれは変わらないようで、『抱きたい』と言われる時もあるが、眠っていない子供たちを放置することも出来ない。
昶もαなのか、発情期に入ると甘えがより一層激しくなり離れたがらない。それは浬にも言えたことで、幼稚園へ連れていく度に
「誰かについてったらダメだよ?」
と言われる。僕にはすでに番がいるから、他のαになにかされても体調が悪くなるだけだ。
浬が幼稚園に行くようになってからは、昼間も抱き合うことが多くなった。昶も保育園に一時保育で1週間だけ預けている。
「気兼ねなく抱けるのは嬉しいね」
「昶を預ける時は今生の別れみたいに泣かれるけどね。うちの子たちはなんであんなに甘えたがりの心配性なんだろ?」
「オレが送迎に行ってやりたいとこだけどな〜」
「それはダメ。樹のイメージが崩れる。今はその生活感のなさが1番の売り物なんだから、それを崩しちゃダメだよ」
「……生活感のなさ……ね。愛する人も子供もいるのに、それが滲みでてないのか……」
「今の樹はそれでいいの。ただでさえ浬は樹にそっくりなのに……昶もね。いい男に育つよ?あの子たちは……」
「昶は雅に似てるとこあるじゃないか。サラサラの髪とか口の形とか。でも、Ωではないな……」
「……そうだね……」
樹もそれは感じていたのか、と思った。
樹のうなじに腕を回し抱き寄せる。
「そのお喋りは今じゃなくても良くない?今しか出来ないことをしたいんだけど……?」
「奇遇だな、オレも夜に備えてゆっくりとほぐしてやりたいと思ってたことろだ。欲しいものは夜に取っておく?今欲しい?」
「……意地悪……Ωの体質を知っててそんな質問をする?しかも僕らは番なんだよ?僕がどんな気持ちで発情期をすごしてると思ってるの?」
「……その言葉を聞きたかっただけだよ?」
低く甘い声と吐息が耳朶を擽る。瞬間にブワッとカサブランカのような花の強い香りが鼻腔に広がる。自分の匂いなのにどこか他人事だ。つられるように樹からも強いヒートの香りが広がり混じり合う。何故かトロピカルフルーツのような香りに変わり、より一層の官能を深めていく。この香りは他人にも効力があるらしく、換気のために窓を開け放つと、申し訳ないことにご近所でも始まってしまうのだ。
胸の尖りを捏ね回しながらキスをされるだけで僕はフル勃起をしてしまう。
「まだ、少し乳首が大きいね。感度も良好で嬉しいよ……舐めたい……」
返事も待たずにしゃぶりつかれ僕は背をのけぞらせてしまう。同時に白濁を飛び散らせた。
「1人でイッちゃったの?じゃ、そのミルクも飲まなくちゃね?」
舌が……指が僕の弱い所を攻めたてる。その度に僕は甘い声をあげて喘いでしまう。
「ァん……あぁぁぁ……ヤッ……ンンン……」
樹の舌がペニスに辿り着いて残った残滓まで吸い出している。子種がない分、生臭さが少ないらしい。逆にたくさんの優良な子種を宿してるαの精液はβのものより苦いと聞く。βの精液なんて知らないから違いなんて全く分からないけれど。
全て舐め取られてからされるキスは、やはり生臭い。けれど、樹のものと比べるとその生臭さは少ない気がする。樹は甘いと言うが、僕自身にはそう感じることは無い。シーツにシミを作るほど滴った愛液を溢れだしている後孔に指が触れた。僕の躰は期待に疼いていた。
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