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第103話

ツプリと音を立てるような感覚で指が僕の中に侵入してくる。実際には濡れた音がしていたのだが……グチュっとなんの抵抗もなしに指が中で僕の弱いところを的確に刺激してくる。 「あぁぁぁ、あぁぁぁ……あぁぁぁん!!」 「……いい声……もっと聞かせて……?」 「……そこ……ばっかり……あぁぁぁ……もっと……奥に……欲し……ぃ……イィィィイィ」 「まだ、ダメ。理性を完全に捨ててごらん?そうしたら雅の欲しいものを好きなだけあげる。ちゃんとたくさん強請ってよ……?」 理性があるうちは僕が恥ずかしい言葉を言えないからそういう意地悪をする。僕のとこを完全に理解している目の前の男は今、僕がその言葉を口に出しても見抜いてしまうだろう…… 「……あぁぁぁ……た……つきィィ……」 僕の喘ぎは止まらない。欲しくて欲しくてたまらないものに手を伸ばすが、腕を取られてしまう。快楽の波にどんどん飲み込まれてイヤイヤとするように無意識に首を横に振る仕草をしてしまう。行き過ぎた快楽こそ苦痛にも変わる。けれど、その先の僕を樹は求めているのだ。 「やぁ……んッ……おかしく……なる……」 「……早く、おかしくなれよ……全部吹っ飛ばしてオレだけを感じてればいい……」 低く興奮した掠れた声で甘く囁かれると、僕も訳がわからなくなってくる。樹が好き……僕の唯一の番……でも、この人は僕の欲しいものを僕が欲してる時には与えてくれない。ちゃんと自分の言葉で好きだと言いたいのに、甘いピロートークは必要ないと言わんばかりに、僕の本音を……心の奥の言葉を求めてやまないのかもしれない。それでも『好き』や『愛してる』は伝えられるのに……愛の言葉以外の他に何を求めているのだろう……? たとえ子供がいたって、僕を満たしてくれるのは樹だけなのに…… 徐々に頭の中が白く染っていく……何も考えられず、目の前の男だけにひたすら縋りつき、めちゃくちゃに乱れていく。体温が気持ちいい、もっと熱い楔で僕を穿(つらぬ)いて欲しい…… 「あぁぁぁん!!もっと……もっとぉ〜……」 「そんなに欲しい?じゃ、オレのも濡らして?」 目の前に差し出されたモノに僕は貪りついて舌を伸ばして口腔内で愛撫する。裏筋を舐め上げると短い息を吐き出す樹とピクっと動くソレに感じてくれているのだと悦びを感じてしまう。唾液を絡ませ口に含むと、生臭い男の味が口の中に広がる。ソレも樹の味なのだ、感じてる証拠の先走りなのだと思うとその味も嫌いではない。確かに僕のものとは違う濃さを感じる。 ――優位種の‪α‬の証…… 「……はっ……これ以上され続けたら、こっちがイカされちまう……」 口から糸を引きながら離れていく太く立派なペニスを名残惜しい気持ちで見ていると 「そんなにコレが好きか?」 「……好き……樹のだから……好き……」 「……ふっ、これからおまえの1番欲しいところにやるから、そんな顔するな……」 不敵……といったようにニヤッと嗤うような表情のまま、後孔にソレが宛てがわれると一気に奥まで穿かれた。 「あぁぁぁ、あぁぁぁ、あぁぁぁ〜!!」 もう、悲鳴のような声しか上がらなかった。目の前がチカチカするような点滅を起こして、僕の眸は何も映していない。見開いた眸から眦を伝って雫が流れ落ちた音が耳元でしただけ……けれど、その衝撃と快楽は同時にやってくる。瞬間的に白濁を吹き上げた。中も締まったらしく樹が堪えるような息をして耐えていた。 「……もっていかれるかと思った……」 快楽に掠れた声で耳朶に囁く。 「そんなに簡単に終わらせてやらねぇっての。昼も夜もたっぷり時間をかけて愛してやるから」 期待に心が震える。樹を引き寄せて舌を出すと 「そんなに悦んでもらえて嬉しいよ……」 舌を絡めてのキスと同時にゆっくりと樹が動き出す。深い悦楽の中で口唇の隙間から零れる喘ぎは、呼吸さえも奪われるような息苦しさと、突き上げられる快感で何もかもがどうでも良くなるような自分に向けられるその優しげな眸だけが僕を支配する。 蕩けるような時間は、僕にとって甘い時間でもあり、絶対に妊娠をしない、という確証のない時間だ。抑制剤に加えてピルを飲んでいても、妊娠しやすい発情期に直接中出しされるのだから当然だ。けれど、その精液がなければΩの熱は治まらない。さらに番がいるなら、番以外に抱かれても治まるどころか、拒絶反応が出るのだからΩとは悲しい生き物だ。‪α‬は番以外でもより強い遺伝子を残す本能が強いし、番を何人も作れる。 ――あぁ……気持ちイイ……いつまでも2人で溶け合うように抱き合っていたい…… 夢なような時間は僕がイカされ続け、樹が長い時間をかけてする射精で昼の部は終了を迎える。その頃にはもう、子供たちを迎えに行かなければならない時間に迫っていた。

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