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第131話

「そういえば……那恵さんがべったり臭いをつけて来た時って仰ってましたが……」 樹を除く3人の大人が顔を合わせて、、気まずそうな表情をした。 「雅くん、には知る権利はあるとはあると思うし、もしかしたら記憶を戻す糸口になるかもしれないけど、キミは聞きたくないだろ。さっき見せてもらった応接室で大まかに話してきてもいいかな?子供たちには聞かせられないし、キミも思い出したくもないだろ?」 『コレ』の時に親指を樹に向ける。玉妃の中で樹の扱いはどの立場なのだろう? 「……僕はそこは思い出さなくてもいい部分なのではないかと思ってますが、社長が同じ立場だったら聞きたいお話ですか?」 「あたしは那恵の全てを知っておきたいね。この女は厄介事が多いから尚更に。問題が起きた時の対処だって知らなきゃできないこともあるんじゃないかな?」 「……わかりました。社長におまかせします」 「了承を得たからちょっと移動するよ?各自飲み物持って応接間集合、子供たちはケーキ食ってなよ?大人の仕事の話だから」 コーヒーのおかわり用のポットを渡しておく。 「はーい」 子供たちはお行儀よく返事をしてフォークで小さくケーキをつついて口に運んでいる。 「雅さんは行かないの?」 「みんなお利口さんでケーキが食べれることがわかっていても、一応は大人の目はあった方がいいからね、ゆっくり食べてて大丈夫だよ。ジュースのおかわりは大丈夫?」 「まだ大丈夫だよ」 雅は子供たちに微笑みかけて、アイスティーをストローでクルクルと回しながら子供たちの様子を見ながら微笑む。子育てに追われて気付いて見たら4人ともしっかりおやつを自分で食べれる年齢になってきてるんだ、としみじみ感じて、少し感動して眸が潤む。 「ぼくら泣かせるようなことした?」 浬がいち早くオロオロして顔を覗き込んでくるけれど、全然違うのだ、と告げる 「子供の成長って早いなぁ、って感動してたの」 「……びっくりしたじゃん。そんなことで感動してるの雅さんだけだよ?ぼくたちだってまだ、成長途中だし、今からそんなんでぼくらが中学生高校生になった時、どーすんの」 浬の言うことは正論だけど、赤ん坊だった子達が、自力でおやつを食べれてる姿を改めて見て感動して、何が悪いんだろう。 「それもわかってるけど、いつもは2人がおやつ食べてても忙しくてゆっくり見ててあげられなかったでしょ?こうやって改めて4人揃って仲良く食べてるって言うのが感動的なの」 「じゃ、浬ママが私たちを見て安心するなら定期的にお茶会をするのも良いじゃない?」 女王様、夢妃様はこの家をお茶会会場にする気満々であらせられる。 「次のお茶会の時にはもう少しクラスのお友達読んだりする?」 「夢妃、うち、パーティー会場じゃないし、うちの親は使用人じゃないんだけど?」 「わかってるわよ。でもうちのママよりお茶が美味しくて、料理も上手って聞いてるんですもの。家じゃ出来ないわ。」 このまま続けさせても平行線を辿るだけなので 「気持ちはありがとう。でも2人とも、妃那ちゃんにも昶にも撮影で会えるから、その時の差し入れに今度は焼き菓子でも作って差し入れようかな、時間があればだけど。」 「焼き菓子ってなぁに?」 夢妃が興味津々に目を輝かせている。 「クッキーとか、マドレーヌとか!カップケーキとかマフィンとかかな。ケーキは衣装を汚しちゃいそうだから、汚れないようなお菓子ね」 「浬ママ、楽しみにしてるね」 もう、絶対に持っていくことが確定してしまっている。焼いてる時間があればいのだけれど…… 表面的には笑顔で、内心はどうしよう、とスケジュールの調整が必要だと、どこを動かせるか、を考えていた。

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