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第138話
「……んぁ……あぁーっっ!!いぃ、よぉ……」
少しペースを上げて突いてやると、雅は予想以上に喘いで樹を締め付けてきた。
「……そんなに気持ちいいの?」
番になったΩの感度はそれ以前より上がると聞いたのを思い出す。もう、その番の相手としかその快楽を分かち合うこともない。
それを知っていながら聞くのは狡いかもしれないが、聞きたかった
「……いぃ……樹……だけ……が……気持ち……よく……してくれる……から……」
「……オレも、気持ちいい……オレ以外ダメだ、ってわかってても……」
「……嫉妬して……くれたの……嬉しい……」
喘ぎの合間に放たれる言葉に満足をする。子供のαだとわかっていても、群がられていたのは釈然としなかったし、白石玉妃やそのパートナーも雅の匂いが好き、と言われてしまえば、自分にとっての特別とは違うのか?と疑問が生まれてしまう。求めた『唯一無二』が揺らぐ。
健気なほどに一途でいてくれるのは、番の契約をしてしまったから。そんなことを考えてしまえばキリがないけれど、他にも理由があるはずだと信じたいし、大きな分岐点があったのだと思うが、思い出せないことがもどかしい。
「……あっ、あん……はぁ……ンン」
肌に触れるこの感触が愛おしい、声が心地いい、自分だけを見つめてるこの眸が高揚感を与えてくれる。フェロモンに酔っていて、αの本能に抗えない状態なのかもしれない。
それでも腕の中で乱れてる姿に夢中になる。口付ける肌が甘い……キスする口唇が甘い。
「……昶のことは言えないな……雅は甘くて美味しい……」
「……ァん……たつ……き……も……んッ」
「……ん?オレも甘いの?」
「……あっ、まい……はっ……ぁあ」
Ωにとっても番のαは甘く感じるのか……人が甘く感じるなんて変な話だ。ただ、してる行為自体は酷く甘くて無防備な行為だと言える。
全てをさらけ出して一糸まとわぬ姿で交わる。互いのことしか見えてない状態で快感を貪っている。 そしてαは発情期のΩを確実に妊娠させることが出来るように、たっぷりと時間をかけて精を吐き出す。
ベッドの飾り棚には水とアフターピルが今日もきちんと置かれている。番同士がセックスをすることは自然のことであるし、もっと言えばβの方が万年発情期だと言えよう。
β同士のカップルや、αとβのカップルも珍しくは無い。雅の家もそうだし、白石のところもそうだ。ただ、αの射精の長さに関しては、βには理解できない、と言われるのはΩはその射精の間も飛沫を受ける度に感じて時間を過ごせるのだが、βはただ、射精が終わるのを待つためだけに30分待たされるのはせっかちな人には向かないだろう。
βはゴムをつけてセックスができる。Ωと違って、精液で発情を抑えられるわけではない。そもそも発情期のフェロモンが出る訳ではなく、その気になるだけだ。
いつでも発情できて、その気になればいつでもセックスが出来るのがβだ。αがヒート状態に入らなければ、普通に吐精すればセックスは終わる。どちらかがその気になればいつでもセックスは出来る。Ωも出来ないことはないが、男Ωは発情期以外は濡れることなく、男同士のセックスと変わらない。
一緒に生活するようになってどうしていたのか、が思い出すことは今はないが、雅も元々性に積極的ではなさそうだし、自分もこの記憶の頃は遊んでたわけではないことを考えると、発情期のみに交わっていたのだろう、と思う。
甘い匂いを放ちながら、腕の中で気持ちよさそうに乱れる姿に夢中になっているのは樹の方だ。肌に口唇を落とし、胸に、肩に、首に、耳に、頬に、口唇に辿りつけばその口唇を夢中で貪りながら、腰を強く打ち付ける。
「ふぁ、ん、あっ、あっ、あっ、あぁ……」
うっすらと開いた眸には樹の姿が写っている。欲にまみれた目の前の男しかいらない、といった表情の男だ。
確かに、自分は目の前の男に溺れている。腕の中で乱れる姿に夢中になっているのは否定出来ない。セックスがこんなに気持ちよく、腕の中の存在がこれほどに心地よく安心出来る存在であることを実感しているのが今だ。
お互いにそろそろ限界が近い。雅はすでに数回白濁を飛ばしているが、次の絶頂が近いことを中が絞まって来ていることから伺える。
「……一緒に……イこうか……」
笑えるほどに快感に掠れた声で雅に言うと、嬉しそうに微笑んだ。
樹がイくために腰の突き上げを強く早くしていくと、雅の声も突き上げに合わせた短いものから長く、悲鳴のような声に変わる。
ーー気持ちいい……
中を締め付けているペニスも、雅が感じているその声も、そこに付随する高揚感も、全てが気持ちいい。
「……あ……イく……」
「……一緒にイこう……」
雅が達したその締めつけに合わせて抗わずにその白濁を躰の奥に打付ける。
ここからが後戯の始まりだ。繋がったまま30分αの吐精が始まる。Ωは飛沫を受ける度に感じるからその度に短い喘ぎを漏らす。キスを顔中に降らしながら、終わり間際にアフターピルを口移しで飲ませる。吐精が終わると同時に眠ってしまうだろうから、飲ませてから落ちる直前に伝える
「愛してるよ、雅」
愛してる……これは今の自分の気持ち。
『運命の番』
か、どうかは、まだ、わからないけれど……
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