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第141話
これでもか、というくらいの服の量を見て、この撮影は何日かかるのだろう?という気持ちになった。樹1人でこの量だとすると共演者がいた場合、さらに押すだろう。
「嶺岸く〜ん?準備する時間はたっぷりあったからね。まとめてやってしてもらうよ〜!!何テイク撮ってもらおうかなぁ〜?」
ニヤニヤした玉妃の嫌味を込めた言葉に笑顔が引き攣る。この社長とは付き合いが長い。この笑みは何かを企んでる顔だ。
ポスター用の宣材、CM用の撮影も何本撮りになるのかわからないほどだ。
「一応、今回の撮影には男女それぞれ1人のもの、男性、女性、男女2人ずつのもの、5人くらいのもの、と分類分けはされる。
こっちの対策としてαとΩ用の抑制剤と看護師常備する。モデルが全バース来るのでαとΩは特に注意するように!!メインは通常通り嶺岸になるからよろしく。
万が一が起きた時は、Ωには薬の効果が効くまでの避難ルームが用意してある。αもGOサインが出たら全員抑制剤を飲むように。それ、強制な?どのタイミングでΩが発情するかわからないので危ないという気配を感じたら情報共有、共通認識するように。
撮影で事故はシャレにならないからね?既婚者は特にβでも注意は怠らないように!!あたしはΩの発情期 の匂いがあまり好きじゃない。Ωの発情期近いモデルの把握もしておくように。」
今日はもう一人Ωらしき男性モデルがいる。玉妃が1番嫌いな男Ωの匂いを出しそうな相手だ。女性モデルも2人いるようで、別部屋での撮影になるのだろう。とりあえずは初日の挨拶も兼ねての注意事項の説明だ。
「今日の男性側の撮影はαの嶺岸樹さん、Ωの川嶋悠真さんで、ポスター、プロモーション撮影を行います。川嶋さん、確認です。発情期は大丈夫ですか?」
「はい。2週間前に終わりました。次の発情期は再来月の予定です。」
まだ20歳くらいのΩモデルは大きな目で、まだ少年が抜けきらないといった顔立ちをしていて、身長も女性の標準も下回っているっぽい見た目をしていた。玉妃は一応確認をする。
「川嶋さんは普通の『Ω』と判断して大丈夫ですか?抑制剤は効く方のΩで間違いない?」
聞かれたことに意味がわからなかったのか、不思議そうな表情をして
「はい。効かなければ抑制剤の意味がなくなりませんか?」
「たまにいるんだよ、発情期に入ってから抑制剤を飲んでも効かないタイプがね。」
「どう対応するんです?」
「パートナーがいればパートナーに任せるしかないね。撮影は発情期が終わるまでは延期。嶺岸んとこも終わったばかりだもんな?」
こっちに振るな、という表情だけ返しておく。
「パートナーがいなかったら?」
「病院で守ってもらうしかないだろうな。たまにいるんだよ、番ってても発情期でもないのにフェロモン垂れ流して発情期前から対処しないと抑制剤が効かない『特殊Ω』ってのがね。
なぁ?嶺岸。」
「はいはい、まだ根に持ってらっしゃるんですか?どっちの件です?部屋の方ですか?妃那ちゃんの方ですか?」
「両方だよ!!3歳児まで誑かしやがって。いつかおまえん家のベッドルーム貸し切ってやんかんな?覚えとけよ?」
意味深な言葉に周りのスタッフも初めての参加者は驚き、いつものメンバーは笑っている。
「その『特殊Ω』をパートナーに持ってんのがこの嶺岸だ。だから、嶺岸のパートナーが万が一発情期の時はこいつ、匂いつけてくるから逆に危ねーんだわ。しかも嶺岸のパートナーの匂いだけにはうちの家系は全員弱い。ちなみにあたしのパートナーはβだ。
子供ブランドの撮影も合間にあるし、嶺岸んとこのパートナーとうちのが仕事でタッグを組んでて、こっちのCMプランもいくつか担当してもらう予定になってるから、杉本さんが来た時にはαは不用意に近づき過ぎないように。もしくは抑制剤を持って歩くように。優秀な上に企画書はもう通ってるから、よろしく。」
確認しておきたいのか、スタッフが持っていたタブレットをスライドし始める。
各プランによって、担当は別れているようだが、それぞれの受け持つ撮影内容は違うだろうから、紙にしたらファイルが本のようになってることだろう。
いざ紙媒体にしたところでファイルが本レベルの厚さになっていることだろう。
実際、アナログ人間だから、とよく見知ったスタッフは紙媒体で持っているが、数百枚単位の紙の束を持っていた。ファイルに入れるにしても数冊に分かれてしまうだろう。その紙の束を紐で閉じていた。
どちらにしても、今日の撮影には雅は来ない。週末に消費した作り置きを盛大に解凍して、新しい保存食を作ってる最中だ。
こんな話をされてるとは露知らず、今頃くしゃみをしているかもしれない。
それを思うだけでクスッと笑いが漏れてしまった
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