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第145話
「嶺岸さんのファンを名乗るなら、あの人のことをちゃんと知らなきやダメだ。幼い頃から芸能界にいて、プライベートを撮られたのは1度きりで、その相手と番になられてるんだからね?
憧れてるなら、クリーンなイメージを貫く!!」
葉瀬に言われても不貞腐れる態度をとる川嶋は本当に子供そのものだった。
「だって、抱きしめられた時、躰にビビって電流が流れるように痺れて、発情するかと思ったもん。びっくりしたのは僕の方だよ!!」
「でもね、お互いがそうならなければ『運命の番』ではないんだよ?嶺岸さんはそうなってなかった。『運命の番』は何人もいるわけじゃないし、β、α、Ωの順で人口が存在してることはわかるね?Ωは絶対数少ない。
1人のαが複数の番を持つ場合、運命とかは関係ないんだよ。αを産んでくれる存在が欲しい場合が多いのが現状だよ。
さらに役者になれるようなΩは稀で、たぶん、嶺岸さんの番の人も稀な存在だと思うよ。
まずね、白石社長も言ってたでしょ?パートナーはβだって。αだからってΩを選ぶわけじゃない。人口の大半はβなんだから。
初めての発情期の時に襲われたり、フェロモンがきっかけで番にされる人もいるし、そのまま番を解除されて、はぐれΩになった人の先は娼館しか道がない場合が多いし、若ければαの繁殖用に買われていく。だいぶ緩和されたとはいえ、Ωはまだ、弱い存在であることには変わりないんだよ?これからが頑張り時なのに、色目使ってる場合じゃないことは自覚して!!
たぶん、嶺岸さんはαとしてより強い魅力を持ってるのかもしれないね。それがΩの本能を刺激する。けれど、本人は『唯一無二』の1人だけを見つけた、ってところだろうね。」
「もぅ、わかったよ!!でも、そのうちに来るんでしょ?番の人を見て僕の方が相応しいと思ったら、その人に譲って、って言うかも。」
それでも食いつこうとする川嶋に葉瀬はコツンと軽く頭を叩く。
「やめなさい。本当に他人の言うこと聞いてない子だね。白石社長の言葉を聞いたでしょ?嶺岸さんがクローバーの専属契約をしてるように、お互いのパートナー同士もコンビを組んで仕事をしてるんだよ。クローバーの子供服のCM見たことあるでしょ?」
「KAITOとYUMENOとAKITOとHINANOって同じ歳同士のモデル使ってるいかにもαって感じだけど、KAITOが嶺岸さんによく似てるって噂のCMだよね。めちゃくちゃ可愛いの。」
「たぶん、嶺岸さんのお子さんと白石社長のおこさんたちだよ。あれをずっとプロデュースしてるのが、お互いのパートナー組。どこの広告代理店も通してないんだよ、あのCM……
たぶん、今は現場には出なくなったけど、ツヴァイコーポレーションで企画をしてるのがその人たちだと思う。大きな事件を起こされて、今はαとβで行動するようになったけど、以前は企画原案者のβとΩで動いてたんだ。
『Ωになにかないように盾になるβ』のはずが、ちょっとした隙にΩが撮影スタッフに集団レイプされて心を壊したって噂が流れた時期があったんだ。嶺岸さんが撮られた写真が病院のリハビリルームだったから、今の番の人だよ。
それに、あの人たちの作品CMは有名だから、今でも現役で企画をガンガン通す人だよ。」
ツヴァイはΩを積極的に採用している珍しい広告代理店だ。
「マジで?でも、そっか、あの子たちにも会えるってことか。あんな可愛い子供産んだだけで勝ち組だよなぁ……僕にもそんな日が来るのかな」
「いい出会いがあるように、これから頑張っていけばいいよ。まだ、若いんだし、これからが売り出し時なんだからね?」
1人のαの役者にたかが抱き合うシーンがあったからと、ときめいていたら仕事にならない。
これからαと絡むシーンはたくさん出てくるだろう。年齢よりも若く見える少年の面差しを残しながら、顔立ちも甘く可愛いタイプだが、どうやら惚れっぽい、ということが分かり、目が離せないと思わせる。軽いαに誘われたらそのまま食われてしまいそうだ。
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