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第148話
女性側の撮影がキリよくなってきた頃、数回の衣装チェンジをして、撮影を進めていた樹は、また元の衣装に戻って、川嶋のスチール撮影を見ていた時に雅たちが戻ってきた。
「おかえり。女性陣はどうだった?」
「少しイメージが違う子がいたから衣装チェンジしてもらったくらいで、あとはスムーズだったよ。さすがプロって感じ。女性ってすごいね」
そのイメージ変更することによってキャラも変えて、演じたことを言ってるのだろう。
「こっち側の相棒はまだ、モデル未経験に近いど素人だ。スチールは何とかこなしてるがCMの方は少し怪しいかな。」
「そうなの?いかにもΩって感じで、若いし、可愛らしいから、そのままでも十分いけそうな気はしてるけどね。ナチュラルな感じもするし。こういうコンセプトだと初々しい方が受けるイメージはいいと思うんだよね。」
――ナチュラル……自分に好意がなければ仕事相手としてはやりやすいだろう。
ただ、今は雅がいる。敵意剥き出しに振り回されんのはゴメンだ。自分の仕事の妨害だけはしないで欲しい。
「……樹は大丈夫なの?……ほら、記憶のこととか、色々あるじゃない?復帰して初めての仕事だし……」
「妻のサポートが手厚いから、特に社長が味方になってくれるって特典が付いてるよ。昨日もコーヒーにキャッキャしてたし」
「美味いんだから当たり前だろ。クッキーも美味しかったよ。わざわざお茶請けまで作ってきてくれるとは思ってなくて、気を遣わせたね。」
「撮影が円滑に進んでくれるなら、大した労力じゃないですよ。皆さんにもお世話になりますし、服の量も凄かったですね。」
雅はニッコリと微笑み満足気にしている。仕事に来た企画原案者と樹のサポートと両方を計算しきった表情だ。
「特にオレの、な?」
「どれも似合いそうで早く作品として見たいよ」
「ツヴァイでもそうだけど、雅くんほど丁寧に仕事出来るΩは少ないってどこでも言ってる。企画より演者としてのプレーヤーの方が向いてる、と言ってるのだって聞いたことあるよ。立ち位置の計算ができるのは強みだ。
スタッフ受けもいいし、那恵からも聞いてるけど、2人の企画、通りがいいらしいじゃん。子供服の方に関してだって、もう1人のプロデューサーがカメラの角度まで指定してくるし、あの子は表舞台でも十分に活躍出来る子だろうね」
「本人にその意思はないみたいですけどね。」
今でも『KAITO』のスカウトは後を絶たない。
「雅さんの発案企画のみ。徹底してるよ、あの子は。君の役に立てばそれでいいって。」
その言葉には苦笑いで返す。『雅さん』と呼び距離を取っているのかと思えば、夕食の準備の時などは話っぱなしだったり、距離感を考える関係では無いけれど、少し大人びたところがある子供ではある。
「明後日からの撮影はどれくらい期間を考えてます?それに合わせてスケジュール組みますけど」
「KAITOとYUMENOはスムーズだろうが3歳児組がどうなるかね。大人組の方と同時進行になるだろうからバタつくよ?」
「なるべくなら子供組は1週で終わらせたいところですね」
苦笑いで、まだ、目新しいものに興味津々な2人をどう操るか……昶にそれが出来るのか、浬がまた負担を負うのか……浬は妃那の扱いが上手い。任せっきりには出来ないが、相性が良いのだろう。大人が口を出すよりも理解してれるのだから不思議だ。
「KAITOくん、来るんですか?」
いつの間にかチェックに入っていた川嶋が目を輝かせて聞いてきた。
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