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第155話

「……顔を見て抱きたい……」 入れたまま躰を反転させて足を肩にかけてグイッと腰を落とし込んだ。 「やっ……ァァ!!」 「……っ、辛い?……」 「……少し……でも……頭、真っ白になる……樹……は気持ちい……?」 「……気持ちいいよ……でも、発情期のセックスと違う気がする……なんて言うか……入ってる場所が違う……?」 発情期には存在を示す子宮ではなく、腸に直結してる気がする。男同士でも感じる、というのを実感してる気がした。そのまま腰を引いてゆっくりと動き始めると雅が発情期の時とは違う反応をした。 「……あ……あ……あぁ……」 その声は濡れているのに切なさを感じる。前立腺を狙うように浅い所で律動をすれば背を反らして声を上げる。普通のセックスのように少し奥まで擦り上げてもシーツを固く握りしめたまま大きく喘いだ。 その様が樹の興奮度を上げていく。自分も気持ちいいけれど、自分の腕の中で喘がせて乱れていく姿を見てるのは、すごく腰に来る。ゾクゾクと這い上がる愉悦の上で自分にしか見せない姿を暴きたい。目の前の人の全てを晒けだして暴きたい。 発情期のセックスとは違い、その性の本能が働くわけではないから、ノットは出ていない。本来の男同士のセックスなのだろう。 ただ、奥の子宮が成りを潜めているだけで、感じる場所はそれほど変わってるわけではないように樹からは見える。腰を引けば絡みついてくる肉壁も樹を刺激して搾り取るような動きをしている。 イってる時と似た感覚。ドライでイったままイキっぱなしになっているのかもしれない。それに気付くと樹は愉しくなってきてしまった。 もっともっと乱れさせたい。発情期で抱いていた時以上の快楽を与えて、どんな風に乱れるのかを、見てみたい。シーツを握り手を自分の背中にまわし、激しく律動すると喘ぎながらもその手に力が入る。本来、脱ぐ立場の樹が肌を傷つけるのは望ましくないのかもしれないが、この未知の興奮はそんなことを忘れさせてしまうほどに夢中になった。 いつの間にか雅からはダラダラと白濁が流れ落ちているが、その勢いがない、ということは、見た目、肉壁の反応通りイキっぱなしの状態なのだろう。『メスイキ』と言うやつなのか、と思いながらも、雅に対する支配欲は強く湧き上がってくる。 「……た……つき……も……むり……」 「……一緒にイこうか」 そう言って腰の勢いを自分がイける動きへと強くさせる。 「あぁ……あっ、あっ、いや……ダメぇ!!」 限界を訴えてきた雅に、樹ももう少し、というところだ。耳元で 「……じゃ、一緒にイこうか……ほらっ、イけ」 流れ出てる白濁を吹き上げることなく、躰だけがビクッビクッと跳ねる。奥にあったもうひとつの出入口に先端を突っ込んで、そこに樹も吐き出した。 「……熱い……」 と言うと、そのまま意識を手放した。 樹はベッドを降りお湯でタオルを絞り雅の躰を拭いた。念の為に後孔も見てみる。普段なら愛液でびしょ濡れになっているその場所も、今回はローションを使ったり、出したりした。それを拭うためだったが、発情期の時には絶対にない後孔から精液が流れ出てきていた。念の為、指を入れてみると見事なまでに掻き出せた。 その事にも感心したが、Ωの躰の神秘を知った気がした。雅が女であれば色んなことが違っていたのかもしれないけれど、きっと流れ出てくることには変わりは無いのだろう。Ωという体質が発情したら精液を注がれないと熱を鎮められないという完全に子供を作るための個体だ。 色んな研究によって抑制剤が作られているけれど、それが効くか効かないかの個人差も出る。αである自分もΩのフェロモンに溺れたのはつい先日の話だ。誰でもいいっていうわけではない。α用の抑制剤を使うのもその為だ。 フェロモンに流されて望まない番や妊娠を避ける為だ。別に子供が欲しかった訳ではないし、子供を作らない番だっている。記憶がなくても自分の分身を見れば、子供を作る選択をしたのは双方の意志ということは一目瞭然だ。 増して雅には中絶経験がある。子供が産めるかも半々の確率だっただろう。妊娠できたのも奇跡に近いことだったかもしれない。周りの話では出産自体が命懸けだったというのだから、雅の強さに感心する。 タオルを洗いに戻り、自分のベタつきを落とす。子供たちが寝てるとはいえ、裸でウロウロするのは良くない、と思いながらもだんだんと疲れていたことを思い出す。タオルをゆすぎ洗濯カゴに放り投げるとそのまま雅を抱くようにして眠りについた。

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