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第163話

「相変わらずすごいね、KAITO様は」 ケラケラと白石が笑う。今日のドリンクは大人組にコーヒー、子供組にもジュースを冷やして持ち込んでいる。アイスコーヒー片手にCM撮影の方からスタートしてる。カメラチェック時のおやつや軽食も用意されている。 「そういや、発情期以外にセックスしてメスイキして立てなくなったって?アイツ、発情期以外にも手を出してきたことあんの?」 「はっ?!は、初めてですよ……なんか……こう……いつもと違う感じで……」 那恵が子供たちに指示してる間に、玉妃と雅で話をしていたのだが、突然の話にしどろもどろしてしまう。 「そうだろうよ。男同士のセックスと変わらないだろうからね。初めての経験だったんだろ?腰抜かすほどヤるとはね、笑わせてもらったわ。」 雅としては笑い事ではない。嫌でもなかったし、良かったのだが、腰が立たなくなってしまったことなど初めての経験だ。その分、撮影も一日押してしまっている。 幸いにして子供たちの撮影は今日明日の2日間を予定していたところに回復が間に合ってくれたことだけが救いだった。ポージングとカメラワークでカメラマンと那恵と浬の3人であれこれと話し合ってるのを見て玉妃はケラケラと笑う。雅は椅子に座ったままその様子を見ているのだが、今撮影しているものの発案者は那恵の方だったので、彼女の作りたいままに任せている。浬の意見のままカメラチェックをしてると『イメージ通り!!』という声が聞こえてくる。2人の意見が一致して、撮影が再開されるようだった。 雅案のものも、浬が仕切り撮影を続けていく。負担をかけまいとしてくれるのはありがたいが作り手としては少し手を加えたいとも思うものの、浬の読解力は完璧だった。昶も妃那もモデルらしくなってきて、衣装によっての自分たちの見せ方を覚えてきているようだった。 ただ、一息つくと「昶ママ〜」と抱きついてきて首元の匂いを嗅ぐのが妃那の癒しになっているようだった。その度に玉妃がため息をつく。 「……本当にうちの家族はキミの匂いに弱い。那恵もそうだけど、あたしもΩのフェロモンで発情することは滅多にないんだけどさ、キミの匂いをベッタリつけて那恵が来た日には、那恵が泣くほど抱いたわ。ノットなんて滅多に出ないのにあの日は収まりがつかなくて……だから、発情期にはあたしは近づかないよ?子供たちの前でぶちかますほど理性を飛ばされるのも困るからね。安心して。キミには手は出さないから」 雅は笑うしかない。白石家は女系であり、玉妃も那恵も性的対象者は同性だ。確かに玉妃に抱かれることはないだろう。お互いに性的対象では無い。仕事のパートナーとしては割り切りができているし、柔軟な思考の持ち主の玉妃は好感が持てるが、恋愛感情は絡まない。特別男が好きな訳でもない。ただ、番が男なだけだ。 Ωは番ってしまえば、その人だけとの強い繋がりとなるが、同時にαは複数人の番をもてる。 でも、雅はほかのΩの匂いをつけたまま帰宅されるのは嫌なタイプだ。だからこそ、唯一無二を探していた嶺岸と番になった。人生のプランにはなかった子供まで産んだ。 子供たちは可愛いし、愛おしいと思う。 そんな気持ちにさせてくれた嶺岸には感謝をしてもしきれないと思う。そのまま一生、切れない繋がりのまま添い遂げたいと思う。 番になってしまったからには他のαは受付けない。拒絶反応がある。 Ωにとって番とは自分では断ち切れない鎖のようなものだ。αは繁殖用Ωを囲えるが、Ωにとっては唯一の存在だ。その契約も解除もα次第でΩには選択権はひとつもない。 雅はただ、待つことしか出来なかった。

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