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第167話

「……そうですね。男性Ωと言うだけでも珍しいのに、番がいてこの匂いは、通常なら有り得ませんね。発情期の抑制剤の効きの悪い状態に近いかもしれないですね」 「どう思う?」 「どう、とは?」 「好きか嫌いか、かな。」 「返答次第で即座にスタジオから追い出されそうな質問ですね。私個人の意見を言わせていただくと、匂いはとてもいいと思いますが、番持ちのΩに手を出すほど残酷では無いですよ?拒否反応のことはαでもΩでも知っているはずでしょう?それに先程からKAITOくんの威嚇もありますし、そんな気にはならないですよ。」 「あいつ、αは全員敵だと思ってんのか?」 玉妃は笑いを必死に抑えているが、抑えきれなくて吹き出して笑っている。 「ツヴァイは元々、Ωのための会社だったのは知ってるかな?企画営業をΩとβのペアでやっていたのは知ってる?どうして最近になってαを雇うようになったのか、とか。」 「私は営業部が設立された時、最初に入社しました。その時に大まかには社長に問いました。現場で暴走したαのこと、そのペアの相手まで狙われてしまったこと……その話に偽りがあるということですか?」 「強いて言うなら逆。全て真実。KAITOはあのΩの息子だけど、他人のαが近づくことを極端に嫌う。あの嶺岸でさえその対象だ。ちなみにあたしは対象外。絶対に手を出さないというお墨付き。まず、ウチは彼に倒れられては困ること。あたしのパートナーの相棒だからね、絶対的な信頼を置いている。彼の匂いに唯一発情するけど、あたしは男は抱けない。 まぁ、あの二人はその被害者だ。あたしと嶺岸で、そいつらは社会的抹殺をしたけど、まだ怒りは収まってない。一生許せないと思うよ。」 「……では、あの二人はツヴァイの人間、ということですか?」 「あたしが勝手にやらせてることだから会社には内緒にしておいて欲しいんだけど、今、君らがやってる企画を出したのは誰?」 「大山那恵さんと杉本雅さんの……雅さん?」 「……そう、その雅さん。あれが杉本雅だよ。大人服の方は変わらずツヴァイを通してるから、 義理は通してるつもりだ。だから雅くんも在宅ワークとはいえ、かなり忙しいはずだよ。 子供服の方は那恵の提案で始めたことで、軌道に乗るかも不明瞭だったから、最初の案から、デザインに関しても手を加えてるから、ツヴァイだけじゃ収まらない話になってね。フリーでやってもらってるってわけ。子供服が軌道に乗ったのはあの二人、と言うよりもやっぱりKAITOがすごいんだ。」 夢妃は浬の言うがままになっているが、自分より目立たせてるが、男の子の服も良いんだよ、というアピールも盛り込まれている。YUMENOという女の子をキラキラとさせて、女の子の服はこんなに女の子を素敵に魅せる、どんな服を着せても、女の子は可愛いんだよ、というのがすごく伝わってくる。その中に男の子は女の子をエスコートして目立たせてはいるものの、実は男の子のオシャレはキラキラした女の子の横でも見劣りしない、さり気ないオシャレ、として自分を魅せることもしっかりとしている。持ち上げられた女の子は決して悪い気はしてないし、YUMENOの性格を理解しきった演出をしてくる。親の両方の親の仕事を完璧に受け継いでいる子供だということは十分に理解した。 そして、KAITOを筆頭にここにいる子供たちは親の仕事の手伝いしかしないモデルたちだ。 YUMENOはKAITOのいないところでは仕事とはいえ、お姫様扱いされない場所へは行かないだろう。幼い方もKAITOの言うがままに演じているが、カットが入る度に女の子がΩの匂いを嗅ぎに来て、ヤキモチを焼いた男の子が反対側を陣取る。これは、どう足掻いても他のプロダクションが動いても、KAITOが動かなければ全員動かないだろう。そのKAITOは生みの親に絶対師事なので、彼のいない現場には全く興味がない。これは苦戦するわけだ。 将来的にどちらの仕事に着くにしても、芸能関係の仕事をするなら、彼の手腕は欲しいと中薗は心の底から思った。

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