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第178話
「はぁぁぁ?!番になった?!」
――そうですね、その反応ですよね……僕もびっくりですよ……
最初の対応こそ、『杉本雅』と勘違いしての応接間への対応だったが、それほどまでに似てるのか、とさらなる興味が湧く。番がいる今、興味があるのは顔の造形だけだ。
悠真はマネージャーの怒りをモロに浴びてる状態だが、葉瀬の罵倒を聞き流しながら、賢祐の方はびくともせず、淡々と話を進めていく。
「まだ、事務所に所属したばかりで、これから売り出すって言う時になんてことをしたんだ。男Ωで処女ってところに商品価値があったのに、すでに誰かのものだってなったら、それだけで商品価値が落ちるんだぞ?」
「僕は商品価値をそんなところにしか見出せない方が問題だと思います。それでは娼館にいるのと変わらないじゃないですか。処女に群がるαだけがこの子の売り出し対象ですか?そんな商品価値に意味はあるんですか?
事務所に落ちるはずだった損害金なら払いますよ?僕は可愛い妻を見せびらかしたいとは思いませんが、ただ、本人はどんな形であれ仕事は続けたいと言っているので、産前産後は休ませますが、シッターに預けられるようになれば働きたいと言ってます。」
「あなたも、いい大人なのに名前も知らない子を連れて帰って番にするとか強引にも程があります!!まだ、この子はまだ、18ですよ?」
「フェロモンでぶっ飛んだ状態の子を放置しろ、というのですか?言葉の一つ一つが残酷ですね。関係を持つ前に僕は彼に名前を聞きましたし、出逢って直ぐに僕はちゃんと自己紹介はしましたよ?落ち着いてからも色々話しました。
それに落ち着いて見えてるようですが、僕は24歳です。αではありますがΩの発情期には抑制剤を飲まなくても対応出来ます。それが発情期でもない彼に触れた途端にお互いに発情状態になった、あなたもαなら意味分かりますよね?」
「……え?葉瀬さん、αだったの?」
「君のそういうところが超心配。あなたが怒ってるのは、軌道に乗って適齢期になったらこの子を番にしようとしてたこと、違いますか?」
「……え?……そうなの?」
「………………」
「ほら、何も言い返せない。『運命の番』なんて早々見つかるもんじゃないからね。誰かと番になっていても運命の番が現れたら、拒否症状は出ないんだよ。だから、君は僕以外とは絶対にそうならない。この子を苦しめたくなければ今まで通りのマネージメントでお願いします。」
「……あなたはそう言いますけど、うちでの被害金をどれだけ出せるというのです?」
「うちの会社の専属でCM出演でもそれに見合った金額をお支払いしますよ?うちのグループ会社は手広くやってますので。」
名刺を差し出す。宮日グループ総括マネージャーという肩書きに『宮日賢祐』の名前。
「……宮日グループの御曹司……!!」
名刺と悠真を交互に見てひたすら驚いている。
「悠真……すごいとこと繋がったな……」
嶺岸ホールディングス、白石のところのクイーンズカンパニー、宮日グループ、輝夜コーポレーション、4大企業として名だたるところだ。
「しばらくは雑誌中心のファッションモデルの経験を積んでもらって、と考えてます。クローバーにもこれから挨拶に行きますが、あの社長と僕は犬猿の仲なので、もしかしたら、オファーがなくなるかもしれませんが、その分はこちらで補いますので。」
にっこりと余裕の笑みでくつろいでいる男の言葉の裏が読めない。
「では、次のアポがありますので僕らはこれで失礼します。あ、昨日、一緒に発情したせいで悠真は発情期に入ってるので1週間は仕事を入れないようにお願いします。まだ、不安定なので」
前もって電話でアポイントをとっていたクローバー社に向かう。白石家、嶺岸家が勢ぞろいしてるはずだ。クローバー社に着くとまず、白石と3人で話をすることになった。
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