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 確かに、オレとオキジョーはいつも一緒だ。それは職場でもそうだし、平日の夜も朝も、休日も例外じゃない。  それだけオレと一緒に居て、カノジョとの時間を作っていたなんて驚きだ。  いや、違うな。【作れなかったから】別れたのか。 「沖縄先輩の幸せを考えるなら、愛山城さんは自立するべきッス!」  そう吠えたセンが、オレを指さす。すかさず、オレはオキジョーに視線を向けた。  それに気付いたオキジョーと、目が合う。 「……ふぅん」  なんでカノジョでもないセンがそんなに怒ってるのかはよく分かんねぇけど、コイツの言い分は分かった。オキジョーから視線を外し、オレはパソコンの画面を見る。  ズラッと並んだ資料データを眺めると、会話を打ち切られたセンが尚更キャンキャンと吠えているが、ムシだ。  別に、オキジョーがカノジョとかいう女とどうなろうが知ったことじゃない。  むしろ、オレが気にしているのはセンの言葉だ。 『沖縄先輩の幸せを考えるなら』  なにが『幸せ』だっつの。簡単に言うなよな、そんなデカい言葉。  そんなもんが考えて分かるなら、あんな夢見ねぇんだよ。  * * *  その日はずっとセンがウザかったが、なんとか定時までに仕事を終わらせたオレとオキジョーは、ほぼ同じタイミングで立ち上がった。 「オキジョー。腹減った」 「今日は寒いですし、お鍋にしましょうか」 「お~、いいな。なまら楽しみだべさ」 「ふふっ。それは良かったです」  脱力しながら立ち上がると、オキジョーがすかさずオレのそばに寄ってくる。 「上着、取ってきますね」 「ん~」  そう言ってロッカーに向かったオキジョーから視線を逸らすと、隣に座るセンが、オレを睨むように見上げていた。……今日のセンは、口だけじゃなくて視線までもがなまらウゼェな。  ムシしようと思い視線を再度逸らそうとしたが、少し遅かった。 「愛山城さん。一個、訊きたいことがあるんスけど」  視線と口調が、どうにも穏やかじゃない 人にものを訊ねる態度には、どうしたって見えなかった。  が、オキジョーが戻ってくるまで特にやることもない。なので、とりあえずセンに視線を送り続ける。無言だが、センの言葉を待っていると伝えているつもりだ。  その意を汲み取ったのか、センが口を開く。 「──沖縄先輩のこと、好きなんスか?」  おいおい、どうした? 今日のセンは、どこまでもウザいじゃねぇかよ。  オレがオキジョーに甘え、ベッタリとくっつきメイワクをかけているだけだと信じて疑わない様子のセンは、どうしてもオレの態度が気に食わないようだ。  しかし、質問内容が最高にうざったく思えるのは、相手がセンだからじゃない。 「うっぜ」  センにとっては初めてでも、オレにとっては聞き飽きた問い掛けだからだ。  センから視線を逸らすと、二人分の上着を持ったオキジョーを見つける。オレはのそのそと歩き出し、ふわっとしたセンの頭をポンポンと叩く。 「じゃ、オレらは帰るから。おつー」 「ちょッ! 頭とか撫でないでくださいッス! それに話も終わってな──あっ、ちょっと! 愛山城さんッ!」  納得のいく答えが貰えなかったであろうセンが後ろで喚いているが、知ったこっちゃねぇ。オキジョーから上着を受け取ると、オレたちはそのまま、事務所を後にした。

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