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なぜかオキジョーは目を閉じていて、眉間にシワまで寄せていた。いやいや、なんだよ。その表情はなんだ? 喜びか?
「なぁ、オキジョー。なんでそんな、ホッとしたような顔してんの」
「突然意味も分からず避けられたら、不安にもなるでしょう……っ」
「避け、られ? ……誰が? 誰を?」
「あなたが、僕を」
……いや、いやいやいや。なに言ってんだ、コイツ。オレはお前を避けてなんかないだろ? 百パー善意だったろ、気付けよ。
そう思い、今日一日の言動を振り返ってみたのだが……。オレはどうやら、致命的なミスを犯していたらしい。
──なんだかんだとメンドウくさがって、オキジョーにはなにも説明していなかった。
「メイを怒らせるようなことをしてしまったのかと、内心気が気じゃありませんでした」
「心当たりでもあんのかよ」
「昨晩の行為、くらいですかね」
昨晩の行為って、なんだっけ? ……あぁ、セックスのことか。
不満もなにも、きっちりお互い出すもん出したんだし、円満なセックスだったろ。それのなにをどう勘違いしたら、怒らせるとか避けるってなるんだよ。
そんな疑問は湧いてきたが、オキジョーを不安にさせたのはオレ……なんだろう。たぶん。
「オキジョーの負担を、ちょっとでも減らそうと思っただけで……怒ってるとかじゃ、ねぇから」
「本当ですか?」
「オレがウソなんてメンドくせぇこと言うって思ってんのか?」
「思えません」
そうだろう、そうだろう? 日頃の行いがいいってことだな。
背もたれに体重を預け、力を抜く。ほとんどのことはセンにやらせたけど、慣れないことをすると異様に疲れるからな。
特に年末調整の記入は、メンドくせぇことこの上なかった。
「メイの気持ちは分かりました。お気遣い、感謝します」
「おう」
「ですが、そういうのは事前に言ってください。心臓に悪いです」
「おう」
そうだ。オキジョーは過保護なうえに、心配性だったっけか。
人に優しいくせして、ハートは意外と弱い。フィジカルへの負担を軽減はしてやれたけど、メンタルにはメチャクチャ負荷をかけてしまったらしい。
「メイが自分一人でできることを増やそうとするのは、立派な心構えだと思います。応援させてください」
「おう。あんがとさん」
「それを踏まえたうえで、ひとつだけ口を挟ませていただけますか?」
無言で、次のセリフを促す。
「料理についてですが、一人分だけを作る方が手間です。なので、できればメイの分も作らせてほしいです」
「そーゆーモンなの?」
「えぇ、不思議なことに。……僕は嘘を吐くような男に見えますか?」
「あー……」
料理なんてメンドくせぇこと、オレはやったことがない。だからそれが本当なのか、オレを気遣ってのウソなのかは正直、分かんねぇ。
だけど、オキジョーがそう言うんだったら……。料理は依然変わらず、オキジョーに作ってもらおう。
「じゃあ、コンビニには寄らなくていいわ。直帰で頼む」
「はい、分かりました」
正直、コンビニ弁当よりもオキジョーが作ったメシの方がウマイしな。
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