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 土日休みは、ほとんど家で寝てた。……起きていたく。なかったからだ。  平日になったらノナガサンを優先すると約束してくれたオキジョーは、普段の休日以上に、家事を張り切っていた。  料理の作り置きとか、大掃除かってくらい掃除とか……。平日、ノナガサンを優先しても問題が無いように先手を打ったのだろう。  ……オキジョーがやり方さえ教えてくれたら、オレだって人並み程度の家事はできるってのに。甘く見られたもんだぜ、まったく。  しかし淡々と家事をこなすオキジョーを見ているのは、なんでかイヤだった。だから寝続けていたのだが、それだけで休みが終わっていたらしい。  ということで今は、月曜日の朝だ。 「──いやぁ、びっくらこいた」 「──それ俺の台詞ッスよ! 人に書類押し付けておいて、なにぼやいてるんスかまったく!」  休日を振り返りながら、思わずぼやく。  すると隣でオレの仕事を手伝っているセンも、ぼやいた。 「知ってるか、セン。年上ってのはな……年上なんだぞ」 「話そうとした途端面倒になって雑なこと言うのやめてもらっていいッスかね?」 「セン、コーヒー淹れて」 「マジで最悪だこの先輩!」  とか言いながら、センはオレのデスクに置いてあるマグカップと自分のマグカップを持って、席を立ったではないか。さすがのオレでも知ってるぞ。これは、いわゆる【ツンデレ】ってやつだろ? オレにはそんなメンドウな属性で萌えるシュミはないがな。  給湯室に向かったセンの背中から視線を外し、正面の席へ向ける。……正面に、オキジョーの姿はないが。 「野長さん。少しいいですか?」  なぜならオキジョーは今、ノナガサンのデスク付近にいるからだ。  今日は職場で、オキジョーと一言も話してない。それはオキジョーが、なにかある度にノナガサンと話してるからだ。  オレはオレで、なにかある度にずっと、センと話してる。だから互いに、話す必要がない。  声を掛けられたノナガサンは、なんでか顔を赤くしながらオキジョーに笑顔を振りまいた。……これは今日、もう何回も見た光景だ。 「解決しました。……さすが野長さんですね、ありがとうございました」  そんなクセェセリフを吐いて、いつもの温かい笑みを浮かべるオキジョーを見て、ノナガサンはさらに顔を赤くする。その光景も、今日だけで何度見たことか……。  要件は済んだらしいオキジョーが、デスクに向かって歩いてくる。  すると必然的に、デスクへ戻ってきたオキジョーと目が合う。 「「……」」  でもオレたちは、なにも話さない。  目が合ってもお互いなにも言わず、逸らし、仕事に戻る。まるで初めから、目なんか合わなかったかのように。 「お待たせしましたッス」 「お~、さんきゅ」  そのタイミングで、コーヒーを淹れてくれたセンが戻って来た。差し出されたマグカップを受け取り、オレは口をつける。  ……これで、正しいんだよな。湧き上がるのは、苦い疑問だ。  歪んで始まった関係の終わらせ方は、ヤッパリ歪んでいるんだな、なんて。上手くもなんともないことを考えながら、オレはコーヒーをコクリと一口だけ飲み込んだ。

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