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今度はなぜか、オキジョーが目を丸くした。
「隠しているつもり、ですか? 別に、メイが男性とお付き合いしても僕は──」
「──ウゼェこと言うなッ!」
その先を想定して、慌てて遮る。
もしも。もしもオキジョーが『なんとも思わない』って言ったら。……それは、聞きたくない。
きっと、降り込めた気持ちが雪崩みたいに溢れて、グチャグチャになる。……それは凄く、怖い。
「付き合ってねぇ。ちゃんと振った。だから、ノナガサンのやつはそういう意味で言ったんじゃねぇ」
「じゃあ、どうしてあんなに応援してきたんですか」
ウソだろ、分かってねぇのかよ。
ずっと。ずっとずっと……オレはただ、ひとつだけ。
「──オキジョーには、幸せになってもらいてぇからだよ……ッ」
オレはそれだけを、願っていただろうが……ッ!
センから『怖い』とお墨付きの睨みを向けながら吠えると、オキジョーはヤッパリ、目を丸くしている。
だけど、センのように怯えた様子は無い。吠えるオレを見下ろしながら、まるで独り言のように、オキジョーはポツリポツリと呟いた。
「そんな、こと……っ。メイは今まで、一言も……っ」
「あァ? ちゃんとそう言っただろうがッ!」
「言われていません。本当に、初耳です」
なに言ってんだコイツ。今までオレは、何度も……ッ!
何度も……あ、あれ……?
「ウソだッ! ちゃんと言っ──……て、なかったっけ?」
声に出していたはずだと思い、回想する。
──が、記憶に無い。
今までオキジョーに『ノナガサンとの時間を優先しろ』とは言っていたけど『幸せになってほしいから』と言ってなかった。
そう思うと、今までオレが言っていたことは? オキジョーからすると、どう見えていたんだ?
オキジョーを避け、半ばノナガサンに押し付けるようにし、オレはセンにベッタリで? 今日、センに告白されて『ありがとう』つって?
──センと付き合うために、オキジョーを追い払っていたみたいじゃねぇか。
「ち、違ぇよッ! オレはオキジョーのことを追い払ったりしたんじゃなくて──」
「僕のため、ですよね?」
「そうだッ!」
そうだった。オキジョーは、微妙にネガティブ奴なのだ。前にオレが年末調整用の書類を自分で書いただけで『避けてる』って思うような奴だったと、失念していた。
そう思うと、だ。オキジョーは今まで、どんな気持ちだったんだろう。
そう考えて、すぐに答えが分かった。
「──そう、だったのですね。……あぁ、良かった……ッ!」
──切羽詰まったみてぇな顔をしたオキジョーに、抱き締められたから。
「オ、オキジョー? なんで、いきなり……?」
「すみません。でも……もう、どうしようかと……っ」
オキジョーは、情けないほどに震えていた。そして、これほどまでにオキジョーを震わせてしまったのはオレなのだ。
「わ、悪かったよ、オキジョー。……だから、な? そんな、震えないでくれよ……っ」
抱き締め返すこともできないまま、オレはただただ困惑してしまった。
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