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第38話

 ふと、センの言葉を思い出した。 『愛山城さんは、沖縄先輩のこと……好き、なんスか?』  今ならこう言える。  ――バカヤロウ。それはオキジョーに訊け……と。 「……オレが、好き……っ?」  人生で、そして本日二度目の告白は……ヤッパリ、慣れない。相手が近しすぎるし、そもそもヤッパリ男だ。どうかしてる。だけどヤッパリ……ウソを吐くような相手じゃない。  でも、オキジョーは少し別だ。 「お、ま……だって、ノナガサンは……っ?」 「お試しだって言ったじゃないですか」 「だからその『お試し』って何なんだよッ!」  意味分かんねぇ。意味分かんねぇ意味分かんねぇ意味分かんねぇクソッ!  つまり、アレか? 特に好きじゃなかったけど告白されたから付き合って、ヤッパリ好きじゃないからって振ったってことだよな? そんな、そんな失礼なこと――。  ――オレとオキジョーの関係……それと、まったく同じだ。 「頼まれたから、付き合いました。だけどどうしたって僕はメイが忘れられないし、メイしか要らない。他はどうだっていいし、たぶん明日メイ以外の誰が死んでも何の感情も抱きません。そのくらい、どうだっていい」  頼まれたから、その通りにした。オレが何かを頼んだら、オキジョーは何だってする。それは、女からの告白も然り。……そういうことか? 「でもメイは別です。貴方が望むことは途中で投げ出さない。どんなに本意じゃなくたって、成し遂げてみせます。メイだけは別なんです」  オレは今、告白された筈だ。その真意を聴いている筈だった。  なのに、何だコレ……? こんなの、まるで。 「だから、そばに居てください。僕から、離れないで。これ以上は何も望みませんから……何だってしますから、だから……ッ!」  ――縋りついてるみてぇじゃねぇか。  情けなく体は震え、声だって震えている。そしてきっと、泣き出しそうな顔をしている筈。今のオキジョーは、会社の人間が憧れるような姿じゃないだろう。  ――それは全部、相手がオレだから。 「メイ……好きです、好きなんです……ッ! 捨てないで……どこにも行かないで、ずっと一緒に……ッ」 「オキジョー、分かった。分かったから一回放せ。……な?」 「嫌です。今ここで放したら、貴方はどこかに逃げるでしょう。それこそ、森青君のところへ逃げていくかもしれない。そんなの絶対に――」 「いいから一回放せっつってんだよバカッ!」  無駄に立派な胸板を力尽くで押すと、自称『メイの頼みなら何でも叶える』オキジョーはゆっくりと離れた。オレが押しても体がビクともしなかったのには目を瞑ろう。情けねぇ。  距離を作り、顔をもう一度見上げると……ヤッパリオキジョーは、情けない顔をしていた。

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