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そんなわけで、佐山を一晩泊め、朝には蹴り出した。 身を縮めて寝ていたせいで身体が痛い。ガチガチだ。佐山がベッドで寝たがったせいでこんな目に遭っている。 と言っても、ベッドで寝たいわけではないらしく、藍季がソファに移ろうとしたら一緒に寝て欲しいとごねられた。 どうやらゲイというやつらしいので多少は警戒したが、よくよく思い出すと中学時代も合宿の時は藍季の布団に潜ってきた。自分ちの布団じゃないと一人で寝れないとか言っていた。 成人してもその悪癖は治っていないらしい。 会社へ向かう道のりを歩きながら、欠伸を漏らす。 朝の飲み屋街は夜とは大違いで静かなものである。 ――そういえば、佐山はちゃんと自宅に帰れたのだろうか。 鍵が彼氏の家に置きっぱなしだとか言っていたが、返してもらえたのか。 考えかけて、慌てて首を振る。何を佐山なんかの心配をしているのか。 あんなやつのことなんか忘れよう。人生で一番嫌いな男なのだ。昨夜のことは悪夢だった。心配してやる義理もない。 佐山との関係も、これっきりだ。 ――そう思っていたのに。 「なんでまたいるんだよ!」 マンションの自室の前に膝を抱えて座っている佐山に小声で怒鳴りつける。 「鍵は返してもらえたのかよ」 「うん」 「じゃあ帰れよ」 「や、マンション追い出されたから」 は?と眉をひそめる。 当然のように言い放つ佐山からは悲壮感はない。 「家賃滞納し過ぎて追い出された」 何をしているんだ、こいつは。呆れてものも言えない。 「仕事は」 「今はしてない」 「今はってどんくらいだよ」 指を何本か折っているが、ねん、と小さい声で聞こえてきた気がして眩暈がした。今までどうやって生きてきたのだ。 「今までの彼氏に養ってもらってきた」 頭を抱える。かつて憧れた少年はとんだヒモ男になっていた。 しかも、彼氏の数も一人や二人ではなさそうだ。 鼻の頭を押さえていると、佐山は首を傾げた。 「あい、泣いてるのか?」 「お前が情けなくて泣けてきたんだよ!」 青春時代の憧れを返して欲しい! 「あい、野宿はやだ」 三角座りのままじいと見上げてくる。またこの子犬のような目だ。佐山の歴代彼氏もこの無自覚甘えっ子にやられたのだろうか。甘やかし過ぎた結果がヒモ化なのか。 「あい」 「……金が貯まって新しく住むとこ見つかるまでだからな!」 舌打ちをしながら、鍵を開ける。 「ありがとう、あい」 ぱあ、と表情を輝かせる佐山に溜息をついた。 なんだかんだで自分も佐山に甘くなってしまうのだ。

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