藍季が会社に行っている間の佐山の行動は謎だ。問うたこともない。 朝食は藍季が用意している。なお、藍季の出勤時間は佐山はまだすやすやと気持ち良さそうに眠っている。 夕食も藍季が用意している。といってもほとんどコンビニ弁当やインスタント食品、スーパーのお惣菜だ。昔は自炊をしようとしたこともあったが、仕事で疲れてきてだんだんと今の食生活になってきた。中年になるとやばそうだ、と自覚はしているがなかなか楽をやめられない。 昼は完全にどうなっているか分からない。開けっ放しで出掛けられても困るので合鍵を渡しているので昼間は職探しに出掛けているのかもしれないし、一日中部屋にいるのかもしれない。金のない藍季のために昼食が食べられる程度のお金は渡しているが、何を食べているか不明だ。いずれは返してもらうつもりなので、せこせこと渡した金額をメモしているあたり我ながらセコい。 とまあ、佐山の日常は謎に包まれている。 ──中学生の時からいわゆる不思議ちゃんなキャラクターではあったが。 とはいえ、藍季の頭からはすっかり、佐山に「彼氏がいた」ことは抜け落ちていた。