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ふわりと漂ってきた味噌汁の香りに、覚醒する。 藍季はベッドからむくりと身体を起こした。ぼんやりしながら欠伸をする。 スマホを手に取り、時刻を確認すると十時を少し回っていた。今日は休みだからいいのだが、随分ゆっくり寝てしまった。 隣で寝ていたはずの佐山の姿はない。いつもは眠る佐山を置いて出勤するのだが今日はさすがに佐山は起床しているらしい。 ──というか、そもそもなかなか寝付けなくて、寝坊したのだが。 「うー……くそ……アイツのせいで……」 昨夜の出来事をモロに思い出し、頭を抱える。佐山にどんな顔をすればいいのか分からない。 「あい、起きたの?」 悩みの元凶がキッチンから出てくる。手にある小皿から味噌汁の匂いが流れてきた。 「なに、料理ハマってんのか?」 「昨日久々にやったら楽しかった」 朝ごはんできてるよ、と言い残し、佐山はキッチンへ戻っていった。炊飯器を開け、しゃもじでざっくり掻き混ぜる。 寝巻きにしているスウェットのままソファに座ると、佐山はテーブルにご飯と味噌汁を並べた。更に卵焼きののった皿も運んでくる。 「はい、お茶」 「お、おう」 お茶の入ったコップを手渡され、受け取り口をつける。佐山は手を合わせて味噌汁をすすった。 「佐山、普通過ぎじゃね?」 思わず言ってしまった。あんなことがあったにも関わらず、あまりにも佐山の態度がいつも通りで困惑する。こっちは動揺しまくりだというのに。 「男同士だし、抜き合いくらい結構みんなするよ。あいは潔癖っぽいからしてこなかったかもだけど」 「う、うるせーな。そうだよ、したことねーよ」 それよりもこのぼーっとした男がしれっと性の話を持ち出してくることに驚いた。 「でもよ、抜き合いって言っても普通咥えたりできるもんなわけ?好きな奴以外のさあ」 例えば藍季が女の子だとしても、彼氏の性器を口に入れるなんて躊躇ってしまう。 「あ、もしかして佐山てめぇ俺のこと好きだな?」 茶化すつもりだった。ヘラヘラ笑いながら佐山を見る。 「好きだったよ。昔、あいのことが」 佐山はさらりと答え、卵焼きを口に入れた。白米もかつかつとかき込む。 「……へ?」 「安心して。昔の話だから。今はそういうのじゃないから」 佐山は卵焼きを箸で一つ持ち上げ、藍季のご飯の上にぽてりとのせた。 「おまけ」 「……お、おう。サンキュ」

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